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リクルートの「暴走」

2019年10月1日

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  政治経済情報誌「ELNEOS」10月号寄稿

就職情報サイト「リクナビ」を運営する、リクルートキャリアの小林大三社長が、サイトの利用者である大学生の同意を得ずに「内定辞退率」を企業に販売していた問題で、記者会見を初めて開いたのは、八月二六日のことだった。

 政府の個人情報委員会が同日、リクルートキャリアに是正を勧告したのを機に行った。

「リクナビ」の内定辞退率にかかわる「DMPフォロー」サービスは七月末に一時停止、八月四日に廃止を決めていた。このサービスは、前年の学生の就職活動の状況のログと、翌年の就職本番の年におけるログを分析、比較して、その結果によっては「採用選考のプロセスが途絶える可能性がある」という情報を企業に提供するものである。

学生の同意を取っていなかった点から、個人情報委員会が「リクナビ」に報告と是正を求めていたことが、メディアの報道で明らかになったのは、八月初めのことである。

トップの記者会見まで一カ月ほどの長きにわたる期間のなかで、運営会社の広報部門が発信した、ニュース・リリースは八月一日付の当該のサービスの一時休止を知らせる「当社サービスに関する、一部報道につきまして」という一文だけである。

リリースは次のように述べる。

「本サービスの提供にあたっては、各種法令にも照らしつつ、学生の個人情報促進を最優先にサービスの設計や各種の規約を整備してまいりました。しかしながら、昨今では個人情報保護に関する社会認識も大きく変化しております」

個人情報について、本人の同意を得ずに分析、その結果を販売することは、個人情報の取扱いに関する従来からの「常識」であり、リリースがいう「個人情報保護に関する社会認識も大きく変化」したために批判にさらされたのではない。

「リクナビ」はいまや就職活動をするほんとんどの学生にとって、自分の個人情報を登録して、採用企業の動向を調べる必須のツールである。

サイトにおける自分の就職活動が、「内定辞退率」として、企業に売られていた衝撃は計り知れない。

リクルートホールディング傘下の企業が「常識」をいとも簡単に超えていく要因は、昭和から平成にかけて政官財を揺さぶった「リクルート事件」の根源をいまだに清算できていないところにあるのではないか。

創業者の江副浩正氏は、上場が近く株価の上昇が期待できる、子会社の株式を政官財にばらまいた。ファイナンス会社の貸し付けをセットにした。さらに、政治献金も巨額にのぼった。「常識」から考えれば、危うい取引である。リクルート報道(朝日新聞、一九八九年)によると、将来の首相候補といわれていた、元官房長官の藤波孝生氏には、一万二〇〇〇株と四〇〇〇万円以上の献金が、宮沢喜一元蔵相には一万株など。

リクルートホールディングスは、「リクルート事件」を教訓として、リスクマネジメント委員会やコンプライアンス委員会の制度を整えている。後者の委員長は、代表取締役社長兼CEОの峰岸真澄氏である。「マイナビ事件」の真相の追及が待たれる。

           (以上です)

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