ブログ

東京五輪は文化催事もカギ  ロンドンに学ぶ

2019年3月2日

このエントリーをはてなブックマークに追加

フジサンケイビジネスアイ 2月1日付 「高論卓説」 寄稿

東京五輪は文化催事もカギ

ロンドンに学ぶ都市の魅了向上

 ロンドンのサウス・ケンジントン地区にあるロイヤル・アルバート・ホールは、高さ約40mの天井を望む楕円形の劇場が約7000人の観客で埋め尽くされていた。クリスマスシーズンの定番である「くるみ割り人形」のバレーを昨年末に観た。演奏はロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、バーミンガム・ロイヤル・バレー団の公演である。会場は、BBCが夏に「BBCプロムナードコンサート」(The Proms)を開催する。サーカスなどの公演もあって、ここへ行けば何かに出会える。

 ウエスト・エンド地区は、ニューヨークのブロードウェイと並ぶ演劇の街。「レ・ミゼラブル」や「オペラ座の怪人」の看板が掲げられた劇場に人の波が飲まれていく。

 ロンドンはすべての季節を通じて、訪れる人々に文化を提供しているのだろう。森記念財団が毎年発表している「世界の都市総合ランキング」18年版によると、ロンドンは2012年にニューヨークを抜いて首位に立って以来、その地位を保っている。東京は16年にパリを抜いて、ニューヨークに次ぐ3位である。

 「経済」と「交通・アクセス」など、ランキングを算定する根拠となる項目のなかで、ロンドンは「文化・交流」において他都市を圧倒して首位である。東京は、ニューヨークとパリに次いで4位と差がある。

 世界都市ランキングのトップにロンドンが立った12年は、五輪開催年である。オリンピック憲章の根本原則として「オリンピアズムはスポーツを文化、教育と融合させ、生き方の創造を探求する」とある。ロンドン五輪における「文化オリンピアード」の成果に注目して、来年に迫った東京五輪も文化の成果を上げるべきだ、と主張するのはニッセイ基礎研究所の吉本光宏さんである。

 ロンドン「文化オリンピアード」は北京大会終了後から、オリンピック・パラリンピックまで4年間行われた。参加者数は4340万人にのぼった。吉本さんが注目しているのは、英国全土の小さな市町村も含めて、劇場や美術館などの文化施設ばかりではなく、公園やストリート、歴史的な建造物、景勝地など1000カ所以上で開催されたことである。

 東京五輪に向けた「文化プログラム」として、文化庁は20年にかけての4年間で20万件の文化イベントと参加人数5000万人の目標を掲げる。内閣官房は五輪後も文化力を向上させようと「beyond 2020」計画を策定した。

 こうした目標を達成して、ロンドン「文化オリンピアード」をしのぐ素地はある。全国各地で毎日のように開かれているお祭りであり、地域の催事を支援する企業や個人、文化施設で催されている習い事の発表会の数の多さである。

 「くるみ割り人形」を演じた、バーミンガム・ロイヤル・バレー団のダンサーの最高位である、プリンシパルには日本人の平田桃子がいた。お菓子の国の王女役である。ロシアの名門マリンスキー・バレー団では同じ演目で、永久メイが主役の少女マーシャを演じている。東京がロンドンになる日は夢ではないかもしれない。

 

 

このエントリーをはてなブックマークに追加