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NHK「クニヤ」を倒せ! BSフジLIVE プライムニュース

2012年9月26日

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「BSフジLIVE プライムニュース」は、月曜日から金曜日まで、夜8時にスタートして2時間近く続くニュース・トーク・ショーである。

  キャスターは月曜から木曜まで、元フジテレビアナウンサーの八木亜希子、政治部編集委員の反町理である。金曜日は八木に代わってアナウンサーの島田彩夏が務める。

  原則としてひとつのテーマについて、政治家や経営者とディスカッションを繰り広げる。

  企業の株主総会が集中する6月27日のテーマは、その日に総会があった東京電力の改革である。

  メインゲストは、東電の株主である東京都の副知事の猪瀬直樹であった。この日総会に出席して、定款に顧客サービスを第一に掲げることなどを盛り込む株主提案をした。さらに、電気料金のコストに切り込み、東電社員とOB専用の都内の病院について、病床の稼働率が低いので、売却を迫った。

  キャスターの八木が舞台回し役を務め、編集委員の反町がディスカッションを主導する。経済の解説委員が、東京電力が抱える問題と、福島の原発事故以来の政府のエネルギー政策などについて、補足する。

  政府のエネルギー政策を立案する諮問委員会などの委員を務める、京都大学大学院教授の植田和弘が加わる。

  冒頭に東電の総会の映像とともに、質問する猪瀬の音声が流れる。

  東電がゼロから再生の出発をするにあたって、猪瀬は「意識改革が一番大切だ」として、定款にその意識を盛り込んだ株主提案の理由を説明する。

  さらに、新宿にある東電病院問題である。都の調査によって、約120床あるベッドのうち、稼働しているのは20床に過ぎないことを指摘するともに、いまはほとんどなくなっている企業の社員やOB専用の病院であることを問題視する。東電の電気料金を算定する際の総括原価にこうした福利厚生費用が含まれるからだ。

  この質問に対して、東電の副社長は、福島原発の作業にあっている社員や作業員のために東電病院の医師らが派遣されているために、病床の稼働率が低い、と答弁した。

  番組では、総会の途中に報道各社のインタビューに応じるため、代々木体育館の外に出てメディアの質問に答える形で、猪瀬は東電の答弁の不合理性をついた。都の調査によると、福島に派遣されている医師は1人で、しかも土曜日だけなので、稼働率が全体として低い理由にはならないと。

  ゲストの猪瀬に対して、キャスターの反町は、株主提案が否決されたことの意義を聞く。そればかりではなく、株主総会でどうして否決されるのか、出席者の挙手で決まったのか、と質問する。

  株主総会の決議が、単位株式の投票によって決するのは、ビジネスマンや株投資をしている主婦には常識であろう。

  猪瀬はいう。

  「株主総会は、結果なんです。それ以前に、株主質問などを通じて、その企業の問題点と改善を指摘する」と、反町の質問をやんわりといなす。

  経済記者として、さらにビジネスマンとして企業のなかに入った筆者として、今回の東電の総会決議事項の白眉は、都が事前に提案した社外取締役候補に、公認会計士の樫谷隆夫が入ったことである。モノ言う社外取締役は、商法上の権限を活用すれば、企業統治のうえで、かなりのことができるのを、筆者は何度も目撃してきた。

  他局のニュース・ショーに出演するために、中座する猪瀬と入れ替わるように、社外取締役に就任した樫谷が登場した。取締役会と監査委員会が長引いたので、出演が遅れたことを樫谷はわびた。

  キャスターの八木が、取締役会の内容について質問した。猪瀬が即座にさえぎる。「樫谷先生も守秘義務というものがある」

  企業というものを八木は知らないだけだ。さらに、原発の再稼働について、東電の方針を樫谷にたずねるシーンもあったが、これも同じ理由である。

  誤解のないようにしていただきたい。「BSフジLIVE プライムニュース」をくさしているのではない。テレビニュースの内容が十分伝えられない点を補おうという番組の意図は讃えつつも、やりようがあるのではないか。

  トーク・ショーのキャスターは、ソクラテスのいうところの「無知の知」が必要だと思う。生半可な知識をひけらかすと、ゲストの知恵を引き出せない。

  もちろん、キャスターはその日取り上げるテーマについて、資料は十分に読んでおかなければならない。新聞や雑誌の記事ばかりではなく、できればゲストの著作なども。

  惜しいかな、「BSフジLIVE プライムニュース」は、それが欠けているのではないか。

  事前の準備があれば、八木はひとりで、十分にトーク・ショーの司会はできる。

  NHK「クローズアップ現代」の国谷裕子には、「無知の知」がある。1993年以来、キャスターを続けている由縁であろう。7時のニュースに続く看板番組であるが、その隙はある。時間が30分間と短く、ゲストが早口になったり、番組の視点が単調すぎたりする。

  「クニヤ」を倒せ!

  CNNの名物司会者だった、ラリー・キングとはいわないが。いったんは引退した彼もインターネットテレビで復活している。 (敬称略)

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