ニュースキューレーション時代の生き残り策
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月間のページビューが100億を超える、日本最大級のポータルサイト・ヤフーのニュースサイトに、米国のエンタテイメントやビデオコンテンツの総合サイトBuzzFeed(www.buzzfeed.com/)の日本版が今冬から加わる。
パソコンのポータルサイトの月間の平均利用者数において、ヤフーが初めてグーグルに抜かれた。今回の提携は、ポータルサイトの集客の核となるニュースサイトのテコ入れという側面がありそうだ。
両社は8月中旬に合弁で日本法人BuzzFeed Jpan(バズフィードジャパン)を設立した。出資比率は、Buzzfeedが51%、ヤフーが49%である。新会社はすでに編集者と記者の募集を開始している。
ヤフーのニュースサイトは、新聞社や通信社からニュースの購入契約を結ぶ形となっている。それぞれのニュースに対する広告収入の金額と、購入金額を単純に比較した粗利益は非公表ながら、かなり高水準と推定されている。
さらに、利用者はニュースサイトを読むついでに、他のサービスを利用することが多いから、ニュースサイトがヤフーの経営に占める役割は大きい。
日本経済新聞が7月に発表した2014年の「主要商品・サービス調査」によると、パソコンのポータルサイトの月間の平均利用者数のシェア1位はグーグルの29.1%で、ヤフーはそれを1.8ポイント下回った。昨年は、ヤフーが25.5%の首位を確保し、グーグルは24.7%だった。
インターネットへの「窓」は、いまやパソコンからスマートフォンに大きく転換しようとしているとはいえ、日本のポータルサイトのナンバーワンの地位にあった、ヤフーとしては首位の座を明け渡した打撃は小さくはない。
米国でヤフーがグーグルに追い抜かれて、その背中も見えない状態に陥っている悪夢が重なるのではないか。
ヤフーの年明けからの戦略をながめると、ニュースサイトにおける新たな布石が目立っている。
今春には、スマートフォンのヤフーのトップページをリニューアルして、ニュースがより読みやすくなった。
全国の地方紙などにニュースを配信している、共同通信の子会社と合弁会社を立ち上げて、ウェブのニュース配信の新しいプラットフォームを模索し始めた。
昨年末には、有識者や個人がニュース解説や意見を配信できる仕組みを、ニュースサイトのなかに新設している。
ヤフーの経営の大きな柱となっているニュースの分野を脅かしているのは、グーグルのニュースサイトだけではない。
さまざまなニュースの媒体や個人の意見をウェブ上から集めて、編集して読者に提供する「ニュースキューレーション」サービスが激化している。
ヤフーのニュースサイトは、そもそも巨大なニュースキューレーションサイトとして、産声を上げたのである。ただ、当時はいまのように競合するキューレーションサイトがなかったので、名称がつかなかったのである。
電通総研の研究主幹である美和晃氏は、「若者たちがネットのメディアを選ぶ理由」と題したリポートのなかで、キューレーション時代について、次のように定義している。
「近年、スマートフォンの普及により、いつでもどこでもネットに接続される情報環境が実現してきました。その状況に後押しされて、ソーシャルメディアを含むさまざまなリンク先から、次々と新しい情報(ニュース)がリアルタイムで入手できる時代になりました」
電通総研は3月初旬に全国の15歳から69歳の計4367人を対象にして、頼りにしている情報源・メディアの関する調査を行った。
全体でみると、テレビのニュース・報道番組に次いで、ポータルサイトのニュースが2位に着けている。まとめサイトは15位、ネタ・話題系サイトは19位だった。
20歳代についてみると、まとめサイトが7位、ネタ・話題系サイトも13位に上昇する。さらに、全体では顔をださなかったキューレーションサイトが18位に登場する。
さらに、キューレーションサイトの利用者の関心領域などを分析している。その領域は「政治・経済・時事情報」にも興味があるが、特徴が最も現れているのは「コミック・アニメ・ゲーム」や「生活情報」(天気や交通事故、事件など)である。さらに、個人的興味や仲間との話題の共有を重視していると同時に、「流行情報」や「トレンド」に意識がいく傾向が強いとしている。
ヤフーが提携したBuzzFeedは、そうして米国の若者の人気を集めているサイトである。日本版がどこまで日本の若者のニュースに対する嗜好をとらえるか。ヤフーのニュースサイトの今後に大きな影響を与えるプロジェクトである。