朝日のキューレーションサービス「eeny」と日経「ビジネスリーダー」
何が受けるコンテンツの挑戦は続く
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ネット広告が動画に比重を移すなかで、新聞社はいかにコンテンツに動画を取り込むのか。ニュースを閲覧する「窓(window)」であるスマートフォンなどの通信速度は増すばかり。映像配信のインフラの進化に対応しようと、新聞社の挑戦は続いている。
朝日新聞社は11日から、ネットの動画や生放送を見る、キューレーションサービス「eeny(イーニー)」https://eeny.jp/
を始めた。ニコニコ動画や生放送、You Tube、Ustreamなどを横断的に、独自のアルゴリズム(計算・処理手順)によって提供する。
それぞれのサービスを提供している企業と提携した。サービスは無料である。リアルタイムの動画・生放送と、話題になっている「HOTワード」、さらに「おすすめ」の分類で、サムネール(小さな画像データ)が並んでいる。
世界的に新聞社はすでに、ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)のツイッターやフェイスブックなどによって読者の取り込みを図っている。大震災や津波、台風などの災害時に、ツイッターによってつぶやかれている被災状況や写真が報道に役立てられている。
朝日の新しい動画のキューレーションサービスもまた、いずれテキストのニュースとの組み合わせが考えられる。ニコニコ生放送が中継している国会中継や政治家の記者会見などは、すぐにでも応用できそうである。
当初のサービスからは導入されていないが、「番組表」のサービスの開始も予定されている。ニコニコ生放送やUstream の中継は予告されるケースが多いから、さまざまなネット動画の番組表という発想は面白い。
そもそもオールドメディアである、朝日がネットの動画のキューレーションサービスの提携に動いたことは、メディア業界は驚きををもって迎えられている。
わき道にそれるが、来春の大卒の新人募集をみると、同社は「アプリの開発」の技能職も求めている。時代の趨勢を感じさせる。
日経新聞は今春のデジタル版のリニューアルで、「トップ」と「速報」に続いて、「ビジネスリーダー」のアイコンを位置付けた。「ビジネスリーダー」は、日経の本紙のみならず日経BPの雑誌の記事を、キューレーションするものである。
このコーナーには、編集長をおいている。ニュースの現場にいって動画による解説をしているのが、新しい試みである。就任したばかりの小板橋太郎編集長は、14日に開かれたシャープの2015年3月期決算の発表会場から、その内容と再建のために同社の中期計画は不十分であることをリポートしている。
日経CNBCによる決算報告の映像や、要点を示す数値などを映像化しながら伝えている。
日経は13日、データベースや金融情報を配信している子会社の日本経済新聞デジタルメディアを7月1日付で、本体に統合すると発表した。
一方、日経本紙と日経BPのそれぞれのネット読者のIDについて、統合を進めている。
デジタル戦略において、長期的な視点に立って立案がなされているといえるだろう。
共同通信の子会社である共同通信デジタルと、ヤフーが合弁で4月1日に設立した、ノアドット社も注目される。
現在のところ、制作するコンテンツの内容は明らかではない。サービスのスタートは今秋が予定されている。
共同通信はいうまでのなく、全国各地の新聞と放送局を会員に持ち、配信先の新聞の部数を単純に合計すると2000万部を超えて、日本で最も影響力があるメディアである。
ヤフーとの合弁会社は当面、テキストのニュースが中心となると推測されるが、その先に映像配信があるのは、メディアの流れではないだろうか。
新聞社のテキストと映像の融合が進んでいくと、新聞と雑誌、ネットメディアの垣根がなくなって、総合ニュースとかあるは経済専門ニュース、地域ニュースといた、ジャンル別によるメディアの分類がわかりやすい時代になるかもしれない。
ネット広告の世界では、すでに新聞社のサイトや雑誌社のサイト、ネットメディアのサイト向けなど、と区分けするよりも、広告が動画であるかあるいは、広告主が自ら中心となって制作する「ネイティブ広告」なのか、といった機能のよる分類になってきた。
昨年初めて年間の売上高が1兆円を超えて、この趨勢が続くと仮定すると、2兆円だったテレビを追い抜くのは、2020年である。
新聞社の動画をいかに取り組むかは、ネット広告をいかに取り組むかという課題でもある。