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『週朝』vs 『サン毎』 最終戦争のゆくえ

2014年6月26日

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『週朝』vs 『サン毎』 最終戦争のゆくえ

新聞社系の老舗週刊誌はどうなるのか

  「たとえば、ここに100人の村があったとしよう。

 その住民のうち39人は10歳以下であり、20歳以下と考えるとその数は57名に達し、30歳以下では70名まで及ぶ。この村で無事還暦を迎えられたのは、5名に満たない……」

 『創刊の社会史』(難波巧士・ちくま新書・2009年)のなかで、難波が「100人の村」になぞらえているのは、日本の雑誌業界の生存競争について語っている。

  還暦を迎えるどころかその後も誌齢を重ねてきた、『週刊朝日』と『サンデー毎日』のライバル同士に雑誌業界の100人の村人の視線が注がれている。両誌はともに1922年の創刊である。

 新聞社系の週刊誌は、ライバルの新聞に広告を出さない慣習が続いてきたのに、5月から『週朝』が毎日新聞に広告を掲載して、新聞の枠を越えたのである。

  このシリーズのなかで、毎日新聞がその出版部門を今秋から分社することをすでに論じた。朝日はすでに2008年4月に朝日新聞出版として独立しているから、過去の新聞社直下の時代とは異なっているから、他の雑誌が新聞を選択して広告をだすのとまったく変わりはないとはいえ、『週朝』が毎日の読者の牙城に攻め込んだ、という見方が雑誌の業界人の一般的な見方である。

 『週朝』と『サン毎』は戦前から戦後にかけて、黄金の歴史をともにしてきた。1950年代には100万部台の発行を誇ったのである。60年代にかけて、出版社系の週刊誌が参入してくるまでは、両紙は週刊誌の代名詞といってもよいだろう。

 『週朝』vs 『サン毎』のライバル物語のいま、はどうだろうか。新聞・雑誌の部数の実態を調査している、日本ABC協会の2013年下半期のリポートによると、『週朝』の平均部数は11万2600部、これに対して『サン毎』は5万3515部である。

 ちなみに、出版社系の『週刊文春』は46万8910部、『週刊新潮』は35万454部である。

 ABCが調査対象の全雑誌の部数が、前年比で5.5%減少し、そのうち週刊誌は7.4%減、月刊誌は6.3%減である。

 『読売ウィクリー』はすでに2008年に廃刊となり、『週刊サンケイ』も1988年に若者雑誌の『SPA!』衣替えされた。

 新聞が増ページされて、新聞社系の週刊誌が担ってきた報道の詳報や、書評、娯楽が新聞本紙で展開されるようになると、部数の減少となって、経営層に早期の廃刊を決断させたのである。

 週刊誌を廃刊するのか、そもそも週刊誌を電子化によって存続させることが可能なのか。新聞が電子化の方向にいくのは間違いないとして、そのなかで週刊誌づくりのノウハウは生かしていけるのか。

『週朝』も『サン毎』も出版社系の週刊誌と覇を競うようにして、「スクープ路線」をとって、部数の維持に努めた時代もつい最近まであった。その方向性のなかでは、『週朝』が大阪市長の橋下徹氏の評伝をめぐって、橋下氏の出自にかかわる表現に問題があったことを認めて出版の社長と編集長が更迭された。

 『週朝』と『サン毎』の最新号を久しぶりに購入した。カッコ内はトップ記事の見出しである)。

  『週朝』 6月13日号 「石原改憲再編」

      6月20日号 「末期がんでも長生きする」

 『サン毎日』6月15日号 「毎日記者が解いた10年の封印」

 6月22日号 「年金大減額はこれで乗り切れる」

  いずれも新聞の延長線上をでていないことに驚かされる。「毎日記者が解いた10年の封印」は、2004年に長崎県佐世保市で起きた小学生の同級生による殺人事件をとりあげたものである。新聞の社会面でも読み応えのある連載があった。

  両誌の紙面構成は、時が止まったかのようにみえる。

 ビジネス雑誌や政治・経済情報誌が、この10年ほどの間に大きく進化していることに気づいていないかのようである。

  大幅に増ページされた新聞でも掘り下げにくい問題について、それらの雑誌は大部のページを割いて深く考察している。

  『週朝』の編集長として、戦後を代表する編集者のひとりといわれる扇谷正造氏(1913~92年)がいま誌面をみたら、時が止まっているどころか、退歩とみるかもしれない。

 『聞き上手・話上手』(講談社現代新書)のなかで、扇谷氏が説く話上手の5条件は売れる雑誌の作り方そのものである。(イ)興味深いこと(ロ)何かためになること(得になること)(ハ)自己啓発に役立つこと(ニ)新鮮であること(ホ)教訓的であること。

 これに続けて、扇谷氏は次のように述べる。

「現代は情報化時代とか知識産業の時代とかいわれている。現代人は情報を求めてやまない。出版界ではその情報量の数によってベストセラーが決まる」

 『週朝』の最盛期に150万部を達成した扇谷氏の教訓を生かしていけば、電子化時代も週刊誌にチャンスは十分にある。

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