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テレ朝・日テレ2強時代の視聴率競争の行方

2014年2月24日

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 東京のキー局のなかをかけめぐった2月の広告収入の予測金額は、業界に波紋を投じた。フジテレビが初めて月間でテレビ朝日に抜かれるという推定である。広告枠の営業競争は、ぎりぎりまで続くので結果は流動的ではある。

 この予測の衝撃は改めて、テレ朝と日本テレビの「2強時代」の到来をテレビ業界に認識させた。

 2013年のNHKと東京キー局の年間視聴率において、テレ朝がゴールデンタイム(19時~22時)12.1%とプライムタイム(19時~23時)12.3%でトップに立って、開局以来、初めて2冠を獲得した。日テレは全日(1日平均)8.0%でトップの1冠だった。

 フジは全日で日テレと朝日に次いで3位の6.9%。しかしながら、4位のNHKとの差はわずか0.3ポイント、5位のTBSとも0.6ポイントだった。

 ゴールデンは4位の10.5%、プライムは3位の10.7%。それぞれ下位のTBSとNHKが肉薄している。

  メディア業界では、広告収入が首位を走ってきた企業が後続に抜かれる瞬間は、あっけないものである。新聞の部数で1970年代にトップだった朝日が、部数で読売に抜かれてもしばらく広告収入はトップだった。その後、日経が部数は読売と朝日にはるかに及ばないものの、広告収入はトップに立った。

  商品やサービスの購入につながる、読者層の年齢層や年収などメディアの質が広告収入にかかわってくる。

  テレ朝が視聴率競争で頭ひとつ抜け出して、日テレと争う時代を迎えてもなお、視聴時間は相対的に長いシニア層向けの番組で資料率を稼いでいるだけで、購買に結びつく若年や壮年層にはフジがある程度の強さを維持している、とみられていた。

  こうした「フジ神話」は、新聞における「朝日神話」が崩れたように、その瀬戸際に立っているのではないか、と放送業界の経営層は認識を強くしているのである。

 キー局の2013年9月中間決算をみると、フジのテレビ事業の売上高は前年同期比2.0%減の1610億円、テレ朝は同2.9%増の1124億円である。両社の売上高には、テレ朝が年間で追い抜くにはまだかなりの差がある。

  いずれにしろ、視聴率競争の苛烈な展開が、テレ朝・日テレ2強時代がしばらく続くのか、あるいはフジの逆転や、かつての民放の雄TBSの復活がなるかの方向性が決まっていくのだろう。

  年間の視聴率の推移をみていくと、フジはゴールデンが2010年の13.0%から11年に12.5%、12年に11.5%そして13年に10.5%と低落傾向に歯止めがかからない。プライムタイムも同様で12年の11.6%から13年の10.7%になっている。

 これに対して、TBSは13年に前年に比べて、ゴールデンが0.5ポイント、プライムが0.5ポイント上向きに転じている。

  テレ朝と日テレの背中を追いながら、振り向けばTBSが迫る。

  「半沢直樹」が視聴率40%を超えて、ドラマとしては今世紀最高の数字をTBSがたたき出せば、フジは同作の主演の堺雅人を起用して「リーガルハイ2」でヒットを飛ばした。正義とはなにかをめぐる、ドラマのテーマ性も高く評価されている。

  民放として後発のフジはかつて、TBS・日テレの2強を追いかけてそして追い抜き、1982年から2010年にかけて断続的に19年間にわたって、視聴率3冠の座に就いた。

 黄金の時代を築くことができたのは、その時代の視聴者の年齢層などの質と、彼らが求めるドラマやバラエティの新商品を開発してきたからである。

  産業界の企業の再生ために、過去の資産の見直しと新たな成長分野を探るのは、メディア業界も同様だろう。

  フジが初めて視聴率3冠に輝いた82年にスタートした「笑っていいとも」は3月末に終了する。これに比べれば、はるかに小さな業界の話題ではあるが、フジで放映されてきた韓流ドラマのソフト化にかかわってきた子会社の幹部が、この分野から異動した。フジの黄金時代を築いたひとりであった。

  過去を懐かしがるよりも、つねに「今」と向き合う。そして過去は瞬く間に忘れ去られる。メディア業界の悲しい性(さが)である。

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