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大手紙の部数大幅減少が止まらないなかで

  Daily Daimond寄稿。週刊ダイヤモンドの購読者向けのサイトです。

 新聞の部数の減少が止まらない。1000万部を誇っていた読売が950万台に、朝日は740万台、一時は300万部台だった日経も大台を割っている。若者を中心とする「新聞離れ」の現象に、今春の消費税の引き上げが部数減に拍車をかける。

  景気の動向をみきわめながら、安倍内閣は年内に消費税を来秋に10%に引き上げる方向を探っている。新聞業界は軽減税率の適用を要望し、その税率を5%にするように働きかけている。

 そうした税制の方向性も業界の動向を大きく左右するが、デジタル版によっていかに部数の減少を防ぐか、コンテンツの課題が経営にのしかかっている。

  大手紙の部数減の大きさは経営層に打撃を与えるものだ。新聞・雑誌の部数に関する公式な調査機関である日本ABC協会による、最新の2014年上期と前年同期に比べた部数減の数値は、以下の通りである。(単位・万、それ以下は切り捨て、▲は減少数)

 読売  956  ▲31

朝日  743  ▲17

毎日  332  ▲6

日経  276  ▲11

 新聞業界が「試読紙」と呼び、一般的には「押し紙」いわれてきた部数が、公正取引委員会などの警告と、新聞社自体の経営の効率化によって是正されてきたとはいえ、部数の長期低落傾向に歯止めがかからない。

  デジタル版が順調に普及するならば、経営に与える好影響は計り知れない。まず、申し込みがウエブ経由なので、購読者のデータを新聞社の本体が握ることができるようになり、さまざまな付加サービスについて売り上げをあげる道が拓ける。新聞業界はこれまで、購読者の名簿を握っているのは新聞販売店であって、新聞社ではなかった。

 いうまでもなく、デジタル版には輸送や印刷コストがかからない。紙面に限界がないから、記者たちにより多様なコンテンツに挑ませることが可能になる。

  ここでは、デジタル版のスタートで先行している、日経と朝日についてその現状をみていくことにする。

 日経が7月15日に発表した6月の部数によると、電子版の有料会員数は36万(前年同期比18%増)、このうち電子版単体の会員数は18万(同24%増)、単体が占める比率が初めて5割を超えて51%になった。

 紙と電子版を合わせた購読者数は、313万。前年同月と比べると0.4%減の微減にとどまった。電子版が経営を支える柱になろうとしている。

  朝日新聞のデジタル版は5月に発刊3周年を迎え、有料会員数は16万人を超えた。このうち、デジタル版単体の会員数は発表していない。紙の部数減の歯止め策にはなっているようだ。

  両社のデジタル版を評価するためには、評価の軸あるいは視点が必要である。

 まず、紙の紙面つまり紙型と、デジタル版の関係である。PCやスマートフォン、タブレット端末に対するデジタル版は、横書きが原則となってきた。

  日経はスマートフォン向けに横書きで読めるアプリと、紙型で読めるアプリのふたつをリリースしている。紙型の分離である。

 朝日は、デジタル版のサービスのなかに紙型のサービスを取り込んでいる。

  この点では、デジタル版を完全に紙型とは別物として位置づけしている、日経のほうが読みやすい。朝日のデジタル版は、スマートフォンやタブレット型端末が登場以前のPC向けサービスのなごりを感じさせる。「24時刊」と題するトップ画面は記事のひとつひとつが箱で囲われたような形となって、タップすれば横書き画面に遷移するが、スマートフォンではそのトップ画面が読みにくい。

  第二の評価の視点は、紙では読めないコンテンツの充実具合である。

 日経の「コンフィデンシャル」は、経済事件の裏側をえぐるコラムである。

 例えば、「マクドナルド 現場を襲う負の連鎖」は、素材の仕入れからアルバイトの確保など、マクドナルドが中国産の加工食品で被った問題ばかりではなく、経営の深層に迫るリポートである。

 「朝デジスペシャル」は、朝日新聞が最初に入手した、福島第1原発の吉田昌郎所長調書の連載で話題となった。原発事故当時のスチル写真や、吉田氏の証言に、東電本社と現地のやり取りの音声を随所に入れ込んだ。

 吉田調書に関する報道の是非についてはここでは触れない。デジタルの意欲的な作品であることは間違いない。

  最後に、映像をどのようにテキスト、スチル写真と組み合わせいるかである。

 このシリーズで取り上げた、ニューヨークタイムズがソチ五輪で試みたような、その3者を組み合わせたデジタル誌面はこれからの課題である。日経も朝日も、記事とは別にそれに関する映像を試みている。

 あとは、ビジネスパーソンがニュースに接触する時間は限られているので、いかにわかりやすく伝えるか、編集技術にかかっている。

 その点では、日経が「超サック!」と命名したニュースのまとめを最近始めた。新聞社のニュースは事件が起きると、刻々と伝えるものの、全体像がわかりにくい。このサービスは編集者が過去の記事も含めて、新たな図表などを使ってまとめている。

 

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今年度第1四半・フジテレビ視聴率低迷 GT5位に

「HERO」「若者たち」……リバイバル路線、人事大刷新のゆくえ

  誰かがこの「ティファニーで朝食を」を原典にできるだけ忠実に、もう一度映画化してくれないものだろうか?「サイコ」やら「ダイヤルMを廻せ!」といった(とくに必要もない)作品のリメイクを作るくらいなら、こっちの方がよほど気が利いていると思うんだけど。  (『ティファニーで朝食を』・村上春樹訳・新潮社、訳者による「あとがき」より)

  視聴率の低迷から脱しきれない、フジテレビが夏の改編にぶつけてきたドラマのなかで、木村拓哉が検事を演じる「HERO」と妻夫木聡をはじめ主役級の若手の俳優陣を配した「若者たち」を見ていると、村上春樹氏の言葉を思い出した。

  「ティファニーで朝食を」の主人公のホーリー・ゴライトリーのイメージに、それを演じたオードリー・ヘップバーンがそぐわない、というのである。リメイクがとくに必要がないと並べられている作品は、いうまでのなくヒッチコックの代表作である。

  リバイバルやリメイクについて、テレビドラマも同様だろう。「HERO」は2001年1月の木村拓哉主演のリバイバル、「若者たち」は1966年以来のリメイクである。

 

 フジテレビが過去の遺産にすがろうとしているようにみえるのは、視聴率の低迷から抜け出させない現実がある。

  今年度第1四半期の視聴率は、ゴールデンタイム(GT/19時~22時)、プライムタイム(PM/19時~23時)、全日(6時~24時)で、日本テレビが3年ぶりにトップの3冠を奪還した。

  フジテレビはどうか。GTは、NHK、テレビ朝日、TBSに続いて5位、振り向けば最下位のテレビ東京である。PTは、テレビ朝日についで3位。全日もテレビ朝日に次ぐ3位である。

 いっこうに視聴率が上向かないなかで、「HERO」の初回(7月14日)が26.5%(関東地区)の好スタートを切ったことは、フジにとって朗報だったろう。「若者たち」(7月1日)も12.7%と順調な滑り出しだった。

  リバイバル、リメイク路線によって、フジは再浮上するのか。

 ビデオリサーチが7月14日発表した新たな「タイムシフト調査」、つまり録画によって視聴された、番組のランキングは楽観論を打ち砕いたのではなかったか。

 米国ではすでに、リアルタイム視聴と録画による視聴を勘案して、テレビCMの料金が決まる。ビデオリサーチは、来年から正式にこの「タイムシフト調査」のデータの販売に乗り出す。今回は、春の改編期にあたる3月31日~6月29日について、試験的にその結果を明らかにしたのである。

 フジはリアルタイムの視聴が下がっているが、録画によるタイムシフトによって、そのドラマは若者たちにみられている、ことに、月曜夜9時スタートの「月9」はそのようにいわれていた。しかし、その「神話」は崩れた。

 今回調査のランキングは、録画7日以内に再生された率による。3月31日に最終回を迎えた「笑っていいとも」が同率で、2位と7位に入っているのを除けば、以下となる。

 ➀「ルーズベルト・ゲーム」 TBS      7.7 %

②「MOZU」                TBS      7.5%

④「アリスの棘」      TBS      7.4%

⑤「最後から二番目の恋」  フジ   6.8%

 亀山千広社長が視聴率の上昇策として打ち出したのは、開局以来の大幅な人事異動だった。その対象は約1500人の社員の3分の2に及ぶ1000人、6月27日付だった。

編成部門を減らして、制作部門に戦力を投入するのが主眼とされている。

 企業の業績が下り坂となったときに、経営者は往々にしてまず組織・人事に手をつけるものである。それには数か月から半年はかかる。そして、新しい組織ができあがると、ひとつの仕事を成し遂げたような気分が社内に横溢する。これまで、いくつもの企業でみてきた。

 新しい部署に異動した従業員たちは、社内外に挨拶まわりや、組織固めの会議などを開かなければならない。そのようにしてまた月日が過ぎる。

組織と人事の改編がうまくいかない場合は、もとの体制に近い形で修正されることもある。

 大規模な組織改編について、7月初旬の定例会見でその方針を明らかにした亀山社長は、次のように述べている。

 「とにかく2位にならなければ決勝トーナメントには進めない。視聴率を回復し、PK戦に持ち込んででもまずは2位に入って戦う権利を勝ち取って欲しい」

W杯の予選になぞらえたのである。

 「HERO」を楽しんでいる私としては、フジが「サムライ・ジャパン」の二の舞にならないことを祈るばかりである。

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現代、ポスト、文春、新潮の活路とは

  雑誌業界では「週刊4誌」という。週刊現代、ポスト、文春、新潮の4誌である。

 いずれも、その部数は低迷している。

  新聞・雑誌の公式部数の調査機関である、日本ABC協会の最新のリポート(2013年下期)によると、週刊4誌の平均部数と前年同期比(カッコ内、▲はマイナス、%)は以下である。

  現代   36万6829部 (▲13.6)

 ポスト  31万9528部 (0.4)

 文春   46万8910部 (▲2.4)

 新潮   35万0454部 (▲4.0)

 

  週刊4誌を今週号まで1カ月間、実際に購入してみた。購入先は大型書店であったり、近所の小さな本屋であったり、KIOSK、コンビニと場所を変えてみた。

  新聞社系の週刊誌に対抗して、1950年代に創刊した文春、新潮、現代、そして60年代にそれらに続いたポストは、団塊の世代のサラリーパーソンことに男性が、ビジネスに関する情報を得るとともにグラビアなどによる娯楽の双方を兼ねた、メディアとして成長を遂げた。

  団塊の世代が企業社会から引退するとともに、週刊4誌の勢いはなくなったかにみえる。最近の4誌の動向をおおざっぱに振り返るとするならば、現代は逆にそうした60歳代の性や健康にからんだ話題をからめて、部数の回復を図った。ポストがこれに続いて最悪期を脱した。

 文春は女性でも読める路線を継続していて、50万部前後の安定的な部数を維持してきた。新潮は創刊当初の名物コラム・特集を復活して、往時の回復を図ろうとしてきた。

  最新号までの特集のタイトルは以下である。

  死ぬまでSEX W杯独占公開 性豪16カ国の「夜の元気度」「性技」「女性器」(ポスト・7月18日)

  大反響第4弾 簡単!安全!タダ!60歳からの「エロ動画」(現代・7月19日)

  年金「納付率をごまかせ」厚労省内部文書を入手(ポスト・7月11日)

  「人生を変えるセックス」(7月12日)

  眠りから覚めた「朴正熙」負の遺産「米軍慰安婦」(新潮・7月10日)

  雅子さまと愛子さま 「登校拒否」再発と「23時の食卓」(文春・7月3日)

  特集は、中国や韓国の政策を批判するものや、皇室に関するもの、60歳代に関心が深い年金ものなど多岐にわたっている。

 それぞれは週刊誌らしい、短期間の取材で、さまざまな証言を集めて読みやすくまとめられている。

 ときに署名原稿もあるが、週刊4誌は新聞社系の週刊誌に対抗して、データマンやルポライターを駆使して、それらのデータをまとめる方式によって、特集をつくりあげてきた伝統芸である。最新号の特集について、その巧拙を論じるものではない。

  週刊4誌の販売部数の低迷の要因として、新聞社系にはない時代性を撃とうという出発点の思想が失われかけているのではないか、という考えに思い至った。インターネットによって、ある分野の情報については、わざわざ週刊誌に頼らなくなくてもよい時代になった、という論議は脇に置きたい。(週刊4誌がそろって取り上げた、都議会でのセクハラやじを受けた女性議員の過去などはそれに当たるだろう)

  週刊新潮やFOCUSなどの創刊にかかわった、伝説の編集者である斎藤十一について、没後に編まれた私家本のなかで、斎藤は週刊誌の本質について次のように語っている。

    ―― 「週刊新潮」のターゲットは。

   齋藤 サラリーマンの普通の人。自分と同じ人が読者だと思った。

   ―― 企画はすべて齋藤さんのものであると聞きましたが。

   齋藤 そういうことはいえない。すみません。

   ―― ほかの週刊誌は読みますか。

   齋藤 ほとんど読みませんよ。新聞だけ。僕は朝日と読売しかとっていない。もちろん、会社には全紙ありますが。

   ―― 「FOCUS」も齋藤さんのアイディアですね。

   齋藤 そうです。「FOCUS」はひとことでいえば「つらが見たい」ということなんですよ。

   ―― 売れるという自信があったと。

   齋藤 当たる当たらないというより、僕が絶対「つらが見たい」と思うから人も見たいだろうという考え方ですよ。

   ―― 特別な情報ルートを齋藤さんはお持ちですか。

   齋藤 ないですよ。

   ―― 会社の人以外とは合わないんですか。

   齋藤 僕は人とは付き合いませんからね。一人でいる方が楽。

   ――部員を集めて編集会議で企画の説明をされる。

   齋藤 僕は、編集会議をやったことがない。

   ―― どうやって企画を部員に伝えるんですか。

   齋藤 ここで説明します(別館2階28号)。今週のプランをね。野平君(注=二代目編集長)、松田君(注=三代目編集長をよんでね。

   ―― なぜ他誌にはない企画を思い付くのか。

   齋藤 俗物だからじゃないですか。俗物いうことに僕は自信を持ってますよ。僕みたいな俗物はまずいないだろうと。

   ―― 「週刊新潮」の狙い目とは。

   齋藤 申し上げたように僕は俗物ですからね。俗物が興味を持つものは決まっています。金と女と事件。

 

 斎藤がいう「金と女と事件」に興味を持つ俗物である、サラリーパーソンに応える特集を創造できるかどうか、いまも週刊4誌の編集者が、部数の増加の活路を探る道は同じだろう。

 「つらが見たい」とは、スキャンダルの主人公の顔である。斎藤は、殺人を犯した少年の顔写真を載せることにも躊躇しなかった。その是非はここでは論議しないとして。

  出版社系の週刊誌の「トップ屋」(スクープを追いかける記者)としてスタートした、作家の梶山季之が、1971年から死の直前まで約30号を出した月刊「噂」は、週刊4誌に必要なもうひとつの要素を提示しているように思う。

  「噂」の大きな柱は、大宅壮一郎や菊池寛といった過去の作家に関する座談会や、その当時の文壇の作家たちに関する情報であった。作家たちの創作を助けた編集たちの証言や随筆も掲載された。

  サラリーパーソンという「俗物」も、読書が充実したものでなくては、仕事もうまくは運ばない。それは、書評欄の充実だけを期待しているのではない。

 作家たちの実像を知りたい。純文学や中間小説という分野の分け方もいまや、明確ではなくなっている。ライトノベルも含めた数々の小説が、いまどのような星座の位置にあるのか、示してくれるようなものが欲しい。

  週刊4誌の編集者たちが意識しているように、ビジネス週刊誌は「金」つまり企業情報や利殖、年金問題などについては、その内容の深さがこのところ進化を続けている。

 こうした分野にどう対抗するのか。編集者の腕の見せ所である。

  週刊誌を買い求めるなかで、ちょっとした驚きがあった。JR恵比寿駅のホームのKIOSKは無人つまり、自動販売機が並んでいる店舗だった。新聞は、日経以外スポーツ紙しかなく、週刊誌はなかった。代わりにビジネスに関する文庫本など30冊近くが並ぶ販売機があった。

 無人のKIOSKに週刊誌がない時代が到来しているのである。

 

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新しいコンテンツとデジタル化にまい進

  プロ野球の横浜DeNAの本拠地の球場からほど近い、日本新聞博物館のライブラリーには、全国各地の新聞がそれぞれ日付ごとに、書架に二つ折りで整理されている。

 北海道新聞、東奥日報、河北新報、信濃毎日……近日付の新聞を手に取れば、インクの匂いとともに、ふるさとのいまが浮かび上がる。

  地方紙はいま、全国紙と地方の小都市を基盤とする、地域紙のはざまで部数と広告獲得の厳しい競争にさらされている。

 ライブラリーの地方紙の紙面には、そうした戦いを勝ち抜こうとしている新聞人の歴戦のあとが刻まれている。

 本拠地の情報をより重視したり、シニア向けや子ども向けの紙面を充実させたり、新しいコンテンツづくりがそのキーとなっている。

  さらには、紙の戦いの外で繰り広げられている、電子版の競争である。先行する全国紙に急追して、紙とのセットで部数を守る戦略である。

  新聞業界は今春の消費税の増税をどう乗り切るか、に苦闘してきた。全国紙に並ぶようにして、地方紙のほとんどは増税分を購読料の引き上げの形で飲み込んだ。しかしながら、地域紙のなかには購読料を据え置いた新聞も多かった。

  北海道新聞や神戸新聞、西日本新聞など、有力な地方紙をみると、「セット割れ」つまり朝夕を読める地域の読者が、夕刊をとらない現象が、消費税の増税によって増加傾向に歯止めがかかっていない。

  地方紙の魅力は、世界や日本の主要なニュースを網羅しながら、地方のニュースを情報量と内容の深さを伴って提供するところにある。全国紙が府県などに敷いている取材網を人的に圧倒している。

  北海道新聞の6月20日付の1面トップは「求ム晴天」のカタカナまじりの大見出しもとに、道内の記録的な長雨の状況を報道している。畜産農家が干し草を干せなくなったり、コンブ漁の船が出せなくなったりして、影響が広がっている様子を道内の取材網を駆使してまとめている。

  中国新聞の6月19日付の1面の左肩にあしらわれた、準トップ級のニュースは、尾道市と愛媛県今治市を結ぶ「しまなみ」街道のサイクリングコースが、米国の旅行サイトによって「世界7大コース」に指定されたことを報じている。

  いずれも、全国紙の紙面でも読みたいところだ。

  西日本新聞の夕刊の地域密着ぶりは、全国紙を見慣れている視点からは驚かされる。しかしながら、仕事から帰って自宅で広げる夕刊という性格と、地域の人々が話題にしているのはなにか、という素直な報道姿勢からすると、当然であると思う。

  6月18日の夕刊は1面トップで、全九州ラグビー選手権の福岡県予選において、修猷館と小倉高校という地元の名門進学校が、決勝で戦うことになったことを報じている。

  2014W杯ブラジル大会の結果は1面の左隅に、点数だけの勝敗表が掲載されているだけで、詳細は中の面に譲っている。

  夕刊における地域密着に紙面づくりは、朝日が首都圏で試みているところではあるが、いかにせん首都圏の3700万人の人々が共通して語る話題を見出すのには苦闘しているようにみえる。

 

 部数の争奪戦と維持のカギは、シニアと子ども向けの新しいコンテンツである。

 

 北海道新聞が今春から週に1回の定期掲載をしている「シニア面」を読む。

 6月16日付の13面のトップは「、「雪との暮らし方 高齢者のヒントに」である。地元の大学の教員が共同研究した、積雪寒冷地の高齢者の生きる工夫が網羅されている。

  西日本新聞の「もの知りタイムズ」面は、ルビを振って、ニュースのポイントを解説する。文体も、「新聞くん」と「おリカ」というマスコットの対話の形式をとって、子どもに読みやすい。6月20日付では、「AKB総選挙」を取り上げている。

  全国紙に比べて、有力な地方紙は販売網と長年の読者に支えられてきたことから、電子化の動きはこれまで一部を除いて鈍かったといえるだろう。ところが、朝日や毎日が、紙の購読者に対して無料の電子サービスを始めたことから、様相は大きく変化してきた。

  北海道新聞と山陽新聞がいずれも6月から電子版を開始する。こうした流れはさらに進み、「紙も電子も」の戦略が業界地図を塗り替えていくことだろう。もちろん、電子化は新聞社がさけては通れない関門である。

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『週朝』vs 『サン毎』 最終戦争のゆくえ

新聞社系の老舗週刊誌はどうなるのか

  「たとえば、ここに100人の村があったとしよう。

 その住民のうち39人は10歳以下であり、20歳以下と考えるとその数は57名に達し、30歳以下では70名まで及ぶ。この村で無事還暦を迎えられたのは、5名に満たない……」

 『創刊の社会史』(難波巧士・ちくま新書・2009年)のなかで、難波が「100人の村」になぞらえているのは、日本の雑誌業界の生存競争について語っている。

  還暦を迎えるどころかその後も誌齢を重ねてきた、『週刊朝日』と『サンデー毎日』のライバル同士に雑誌業界の100人の村人の視線が注がれている。両誌はともに1922年の創刊である。

 新聞社系の週刊誌は、ライバルの新聞に広告を出さない慣習が続いてきたのに、5月から『週朝』が毎日新聞に広告を掲載して、新聞の枠を越えたのである。

  このシリーズのなかで、毎日新聞がその出版部門を今秋から分社することをすでに論じた。朝日はすでに2008年4月に朝日新聞出版として独立しているから、過去の新聞社直下の時代とは異なっているから、他の雑誌が新聞を選択して広告をだすのとまったく変わりはないとはいえ、『週朝』が毎日の読者の牙城に攻め込んだ、という見方が雑誌の業界人の一般的な見方である。

 『週朝』と『サン毎』は戦前から戦後にかけて、黄金の歴史をともにしてきた。1950年代には100万部台の発行を誇ったのである。60年代にかけて、出版社系の週刊誌が参入してくるまでは、両紙は週刊誌の代名詞といってもよいだろう。

 『週朝』vs 『サン毎』のライバル物語のいま、はどうだろうか。新聞・雑誌の部数の実態を調査している、日本ABC協会の2013年下半期のリポートによると、『週朝』の平均部数は11万2600部、これに対して『サン毎』は5万3515部である。

 ちなみに、出版社系の『週刊文春』は46万8910部、『週刊新潮』は35万454部である。

 ABCが調査対象の全雑誌の部数が、前年比で5.5%減少し、そのうち週刊誌は7.4%減、月刊誌は6.3%減である。

 『読売ウィクリー』はすでに2008年に廃刊となり、『週刊サンケイ』も1988年に若者雑誌の『SPA!』衣替えされた。

 新聞が増ページされて、新聞社系の週刊誌が担ってきた報道の詳報や、書評、娯楽が新聞本紙で展開されるようになると、部数の減少となって、経営層に早期の廃刊を決断させたのである。

 週刊誌を廃刊するのか、そもそも週刊誌を電子化によって存続させることが可能なのか。新聞が電子化の方向にいくのは間違いないとして、そのなかで週刊誌づくりのノウハウは生かしていけるのか。

『週朝』も『サン毎』も出版社系の週刊誌と覇を競うようにして、「スクープ路線」をとって、部数の維持に努めた時代もつい最近まであった。その方向性のなかでは、『週朝』が大阪市長の橋下徹氏の評伝をめぐって、橋下氏の出自にかかわる表現に問題があったことを認めて出版の社長と編集長が更迭された。

 『週朝』と『サン毎』の最新号を久しぶりに購入した。カッコ内はトップ記事の見出しである)。

  『週朝』 6月13日号 「石原改憲再編」

      6月20日号 「末期がんでも長生きする」

 『サン毎日』6月15日号 「毎日記者が解いた10年の封印」

 6月22日号 「年金大減額はこれで乗り切れる」

  いずれも新聞の延長線上をでていないことに驚かされる。「毎日記者が解いた10年の封印」は、2004年に長崎県佐世保市で起きた小学生の同級生による殺人事件をとりあげたものである。新聞の社会面でも読み応えのある連載があった。

  両誌の紙面構成は、時が止まったかのようにみえる。

 ビジネス雑誌や政治・経済情報誌が、この10年ほどの間に大きく進化していることに気づいていないかのようである。

  大幅に増ページされた新聞でも掘り下げにくい問題について、それらの雑誌は大部のページを割いて深く考察している。

  『週朝』の編集長として、戦後を代表する編集者のひとりといわれる扇谷正造氏(1913~92年)がいま誌面をみたら、時が止まっているどころか、退歩とみるかもしれない。

 『聞き上手・話上手』(講談社現代新書)のなかで、扇谷氏が説く話上手の5条件は売れる雑誌の作り方そのものである。(イ)興味深いこと(ロ)何かためになること(得になること)(ハ)自己啓発に役立つこと(ニ)新鮮であること(ホ)教訓的であること。

 これに続けて、扇谷氏は次のように述べる。

「現代は情報化時代とか知識産業の時代とかいわれている。現代人は情報を求めてやまない。出版界ではその情報量の数によってベストセラーが決まる」

 『週朝』の最盛期に150万部を達成した扇谷氏の教訓を生かしていけば、電子化時代も週刊誌にチャンスは十分にある。

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