グーグルは得意技で 下
さらに、グーグルは6月7日、被災地の地元紙である7社と組んで、ユーチューブに「東日本ビジネス支援チャンネル」を立ち上げた。東奥日報(青森市)とデーリー東北(八戸市)、岩手日報(盛岡市)、岩手日日(同)、河北新報(仙台市)、福島民報(福島市)、福島民友(同)である。
「支援チャンネル」に至る足取りについて、グーグル・ジャパンのプロダクトマーケティング、マネジャーである長谷川泰は振り返る。
震災から1週間が経過して、パーソナルファインディングと同じコンセプトの取り組みを動画でできないか、と思い立って、「消息情報チャンネル」を始めた。テレビ朝日とTBS系列の地方局が避難所で撮影した動画を掲載していった。名前や避難所によって検索できるようにした。
その次に、復興支援をユーチューブで行いたいと考え、社内で議論を重ねた。実際にグーグルの社員が被災地を訪問し、復興や経済支援といった観点から、何が必要とされているかを取材した。
この結果が「支援チャンネル」である。ユーチューブは動画の投稿サイトであり、取材はできない。グーグルが眼をつけたのは、地元の企業や経済に詳しい地元紙だった。被災地の企業などを取材したのは、記者がした場合もあり、営業担当者がした場合もあった。
グーグルはこのサービスについて、テレビCMを使って広く宣伝した。その結果、登場した被災地の企業に関西から注文が入ったケースもあった。 「支援チャンネル」で視聴可能な動画本数は、8月15日までに415本に達した。
プロジェクトのパートナーである地方紙について、長谷川は次のように評価する。
頭ではわかっていたことだが、実際に一緒に活動させていただく中で、肌で感じる新聞社のみなさんの取材力の高さには、心から驚いた。地元の企業についての情報量や、関連するニーズの把握も的確で、幅広く企画のないようにマッチした取材対象を選んでいただけた。インターネットに対応できるインフラもきちんと整っていおり、お寄せいただいた各社の動画から、媒体が紙から動画に変わっても取材対象の魅力を引き出しているのを見て、新聞の良さをアピールできるのではないか、とも感じた。
長谷川の指摘は、こらからメディアが目指すべき方向も示唆している。地方紙の側からみると、紙ばかりではなく、ツイッターやフェイスブックなどのソーシャル・ネットワーク・サービスに加えて、自らが動画の配信もできることを確認したといえる。
(第2部 完)
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参考文献
新聞研究 2011年9月号
<インタビュー>新聞社の高い取材力を実感――グーグルと被災地の地元紙との連携
グーグル プロダクトマーケティングマネジャー 長谷川 泰