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「そのとき、メディアは――大震災のなかで」第2部 ⑯ 原発報道にツイッター 下

2012年6月27日

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原発報道にツイッター 下

 NHK科学・文化部長の木俣晃は、ツイッターを活用したことについて、プラス面を次のように評価している。

 ツイートは当初、一方的な呼びかけや情報提供で始まったが、フォロワーが増え、質問が増えるにつれて、質問への回答も多くなっていった。さらに、放射線量への関心が高まってからは、ツイッターでブログへいざない、詳しい情報はブログで伝えるという手法も増えていった。結果的には、ツイッターの「速報性・簡便性」とブログの「記録性・無限性」を組み合わせて使うことで、テレビ・ラジオの放送を補う一定の効果があったのではないかと思う。

 ツイッターやブログに多くの意見が寄せられたため、人々の関心事や思いを感じながら仕事をすることができ、テレビの解説などにフィードバックすることもできた。さらに、ツイッターでは、1人の質問に答えることが同時に多くの人に伝えることになるため、結果として、新しい形の視聴者対応の役割を担うことになったと言える。

 その一方で、「ツイッターを使うことには覚悟がいる」と、木俣は率直に述べている。

 そもそもツイッターは簡単に情報を発信できる一方、一歩間違えると混乱を生む要因にもなり、相応の怖さを抱えている。安易に手を出すと大やけどをする代物である。

(科学・文化部ではツイッターに先立って)まずブログを運営することにし、利用を申請した。(NHKの)ツイッターについては業務利用ガイドラインに「厳選された者に限り例外的に利用を認める」と記され、厳しく審査される。ポイントは幾つかある。▽NHKの情報として世界中に公開されることの意味と危険性をよく理解していること、▽一定レベル以上のネットリテラシーとある種の覚悟があること、▽継続的に行える態勢があること――などだ。

 担当者は、まさに昼も夜もなく、ツイートを続けることになった。また、フォロワーとの関係があるため「親しみ」を込めて、日常会話的な表現をした方が自然なことも多い。さりとてくだけすぎても良くない。なかなか難しいものだと思う。ツイートについては、踏み込みの度合いや表現ぶりを含め、まさに模索しながら進んできたが、あらゆる意味において「視聴者のために」という意識があって初めて成り立っている取り組みであることは、肝に命じておきたいと思う。

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参考文献

新聞研究 2011年9月号
原発災害報道にツイッターを活用――テレビ・ラジオを補う効果
日本放送協会 科学・文化部長 木俣晃

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