ブログ

「そのとき、メディアは――大震災のなかで」第2部 ⑮ 原発報道にツイッター 上

2012年6月25日

このエントリーをはてなブックマークに追加

 原発報道にツイッター 上

  福島第1原発の事故に際して、NHKがツイッターによって報道をした。ソーシャル・ネットワーク・サービスとメディアの関係が大きく変わる瞬間だった。

 その主体は、科学・文化部である。ツイッターのアカウントを取得したのは、大震災が起きた2011年の初めのことだった。災害報道に活用しようと考えていたわけではなかった。原発事故の直後は、ツイッターでつぶやかれている被災者の情報をチェックして、選択して放送することに利用していた。

 科学・文化部長の木俣晃は、災害報道にNHKのツイッターがつぶやき始めた瞬間を振り返る。

 

 担当デスクがツイッターでつぶやき始めたのは、(3月)11日夜8時を回ってからだ。翌12日の明け方までのツイート  は12件ほど。しかし12日午前9時すぎから急激につぶやきが増えている。この頃からは、ニュースを短く伝えたほか、菅総理や枝野官房長官の記者会見の内容を10から20の連続ツイートで伝えたり、テレビで伝えた記者解説の内容をツイートしたりしている。この日のツイート数は、293に上っている。その後も4月にかけてはツイート数が100を超える日も多く、かなりのヘビーユーザーだったと言える。

 フォロワーの数は、震災前日の3月10日に3千人ほどだったが、1カ月後には8万人を超え、3カ月後に12万人に達した。この間、フォロワーとのやりとりを繰り返す中で化学反応のようなものが生じ、その使い方や、伝える内容に少しずつ工夫が加えられていった。そして、テレビ解説と同じように、ツイッターにも次第に「新たな役割」が加わっていった。

 ◇     3月12日 避難20キロ圏に拡大

・     【原発19:22】みなさん念のため、テレビでこれまで放送した内容とおなじものをつぶやいています。

・     【原発19:22】原子力発電所から放射性物質が放出された場合、ヨウ素や希ガスといった気体のような状態で出るため、これらの物質から出る放射線の被曝を防ぐ必要があります。

◇     3月13 日頃 3号機で水素爆発

・     【被爆とは①】ご質問の多い被爆について、ご説明します。「被ばく」とは、放射線を浴びることです。私たちは、日常の生活の中でも、宇宙から降ってくる放射線や食べ物の中に入っている放射線などを、平均で、年間2400マイクロシーベルトを浴びています。

◇     4月17日 質問に答えるツイート例

・     3号機では584体の燃料集合体のうち32本、5.8%がMOX燃料でしたRT@×××3号機はMOX燃料を使っていると認識しています。間違いないですか?

・     私たちも当初から注視して複数の関係者に取材していますが、現在の炉の状態では、かなり条件が重ならないかぎり再臨界の可能性は少ないと見られます。RT@再臨界の可能性はないのでしょうか?

◇     ブログと連動したツイート例

・     【子どもの被ばく限度は1ミリなのか?20ミリなのか?】学校の安全目安をめぐってわき起こる多くの疑問。藤原記者の解説をブログに掲載しました。引き続きご意見、募集しています。http://bit.ly/h17O6Q

 ――

参考文献

新聞研究 2011年9月号
原発災害報道にツイッターを活用――テレビ・ラジオを補う効果
日本放送協会 科学・文化部長 木俣晃

 

 

このエントリーをはてなブックマークに追加