NHKがUstで流れた
ユーストリームでNHKの放送が流れるという、歴史的な出来事をつくったのは、広島県内に住む中学2年生の男子生徒だった。それは、後日わかる。時刻は、地震発生直後の午後3時3分だった。
ユーストリームアジアは、違法な利用がないかどうか、24時間体制で監視している。NHK総合テレビの地震の特別番組が流れていることをつかんだのである。通常の判断であれば、地上波の放送をユーストリームで同時に流すことは違法であり、即座に遮断することができるシステムになっている。ユーストリームアジアは、緊急事態だとして、遮断を保留して、NHKに要請した。
ジャーナリストの高瀬毅のインタビューに対して、ユーストリームアジア(本社・東京)の代表取締役社長の中川具隆は次のように述べている。
「ユーストリームで配信しているユーザーがいることを確認したが、万単位の人がフォローしていることがわかった。
そこで、これは国民が必要としている重要な情報であるということと、電気が切れてテレビが観られない人や帰宅難民でユーストリームでしか情報が取れない人がいることを踏まえて判断してほしいということ。それに、NHKさんが自 身でも始めて欲しいということを伝えた」
この要請に対して、NHKのデジタル部長の兄部純一はすぐに上層部に伝えた。そして30分後には了承の返事があったのである。兄部は、高瀬に次のように述べている。
「本来なら認められないが、人を助けることができるなら黙認しようと即座に思った」
ユーストリームによるNHKの地震の特別番組は、総合テレビが午後9時30分から開始された。これと並行して、NHKにはニワンゴからも同時送信の可能性の打診があり、午後7時40分、ニコニコ生放送を通じて配信が始まった。 さらに、13日午前0時過ぎから、ヤフーの同時配信も始まった。
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参考文献
放送メディア研究 No.9 2012 (NHK放送文化研究所、丸善刊)
東日本大震災でテレビとネットはどう協力したか 高瀬毅