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「そのとき、メディアは――大震災のなかで」第1部 ⑬ 「東京発」は眠らない

2012年4月25日

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「東京発」は眠らない

 大地震が発生した翌日の3月12日夜11時55分、テレビ東京が、各局に先がけて定時のアニメ番組を放送するまで、在東京のテレビ局全てが報道特別特番を続けた。

 NHK放送文化研究所のメディア研究部は、各局の特別番組の特徴を次のように記している。

NHK総合 民放に比べると東京のスタジオからの情報発信に多くの時間を割き、発生直後から一貫して、原稿による情報の整理や余震・津波に関する情報提供・避難の呼びかけに重点を置いた。

日本テレビ 午後5時からの「ニュースevery,特別版」として、平時の夕方ニュースのキャスターがメインを務めた。被災者への呼びかけを積極的に行い、その内容は、避難所での寒さをしのぐ過ごし方や帰宅困難者への注意事項など、早くから今回の事故の「複合的な側面」に目配りしたものが多かった。

 民放各局にほぼ共通するが、日没以降は一貫して東北県域民放局のスタジオと結ぶ形式を多用し、ほぼ1時間に1~2回の割合で宮城・岩手・福島のスタジオとつなぎ、VTR・中継を含め、現地からの情報を伝えた。

TBS 夕方のニュース番組「Nスタ」のスタジオをベースに、地震・津波情報を伝えた。メインスタジオとは別のアナウンサーが1名常時張り付き、最新の情報はそこから伝えることを基本の形にしていた。この結果、メインスタジオは全体の流れの調整、解説、およびローカル各局とのつなぎ役としての機能にある程度特化して情報整理を行った。その分、視聴者へ「呼びかける」タイプの情報提供は比較的少なかった。

フジテレビ 前の時間帯から引き続き、報道フロアの一角にセットを設け、安藤キャスターが全体の仕切り役を務めた。他局と比べて、解説や報告の際にも中継やVTRの映像を早め早めにかぶせていく傾向があり、現場の映像を優先して織り込んでいく姿勢が見られた。

テレビ朝日 夜7時から「報道ステーション」の古館キャスターがメインで情報を取り仕切った。報道開始直後から、情報提供に加え、余震・津波への警戒の呼びかけが随時行われた。比較的早くから、自衛隊の動きに関する情報を伝えていたことが独自の特徴としてあげられる。

テレビ東京 スタジオでのアナウンサーによる進行と社員の気象予報士による解説、さらに報道フロアを設け各地の被害情報を担当アナウンサーが繰り返した。最も被害の大きかった東北の映像は少なかった。その一方で、他局が全く伝えることがなかった株や為替、企業の動きなど経済関係の情報を多く伝え、海外報道の動向を伝えるニューヨークからの中継も経済情報にからめて他局に先駆けて行われた。

 

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参考文献

新聞研究(日本新聞協会刊)2011年6月
膨大な被災者の今を伝え続ける  河北新報社・編集局長 太田巌
地方の視点で震災と原発に向き合う  福島民報社・編集局次長 安田信二
求められる情報、総力で迫る  朝日新聞東京本社・社会グループ 石田博士 | 朝日新聞名古屋本社・報道センター次長 日浦統
最初の6時間 テレビは何を伝えたか  日本放送協会「ニュース7」編集責任者・等々木健

新聞研究2011年7月号
危機に問われる新聞力  岩手日報社・常務取締役編集局長 東根千万億
未曾有の災害連鎖を伝える報道  福島民友新聞社・編集局長 加藤卓哉
総合力で新聞の力を示すために  読売新聞東京本社・編集局総務 松田陽三
特別紙面「希望新聞」の取り組み  毎日新聞東京本社・生活報道部長 尾崎敦
現場取材で感じる人々の思い  茨城新聞社・日立支社 川崎勉
被災者基点と共助を座標軸に  河北新報社・論説委員長 鈴木素雄

新聞研究2011年8月号
激動の原発事故報道  朝日新聞東京本社・前科学医療エディター 大牟田透 | 朝日新聞東京本社・政治グループ 林尚行
率直な疑問をぶつけていく  東京新聞・科学部 永井理
地元の安全対策論議に応える  静岡新聞社・社会部長 植松恒裕
食の安全・安心と報道の役割  日本農業新聞・農政経済部長 吉田聡
市民による震災報道プロジェクト  OurPlanet-TV・副代表理事 池田佳代

新聞研究9月号
地域社会との新たな関係づくり  河北新報社・メディア局長 佐藤和文
原発災害報道にツイッターを利用  日本放送協会 科学・文化部長 木俣晃
新聞社の高い取材力を実感  グーグル・プロダクトマーケティングマネージャー 長谷川泰
長野県栄の震災をどう報じたか  信濃毎日新聞社・飯山支局長 東圭吾
感情を抑えて、被災地に寄り添う  河北新報社・写真部 佐々木 浩明

新聞研究2011年10月号
取材で感じた報道写真の役割  毎日新聞東京本社 編集編成写真部 手塚耕一郎
後世に「教訓」を伝える  岩手日報社・編集局報道部次長 熊谷真也
全社的訓練とノウハウが結実  日本放送協会・福島放送局放送部 鉾井喬
頼られる存在であり続けるために  岩手日報社・編集局報道部長 川村公司
震災のさなかのある地から  河北新報社・編集局長 太田巌

調査情報(TBS刊)2011年7-8月号
未だ蘇る声  東北放送・報道部 武田弘克
震災特番 Web配信  TBSテレビ 報道局デジタル編集部担当部長 鈴木宏友

調査情報2011年9-10月号
テレビ報道が信頼を回復するために  映画作家 想田和弘
震災の前と後で日本の政治は変わっていないし、私も変わらない  文芸評論家・文化史研究家 坪内祐三
「災後」社会を「つなぐ」  政治学者 御厨貴
「焼け太り」のひとつだに無きぞ悲しき  フリープロデューサー 藤岡和賀夫
気仙沼で生まれた自分しか話せないことがあると思うから  スポーツジャーナリスト 生島淳
三陸彷徨 魂と出会う地で  JNN三陸臨時支局長 龍崎孝
結局私は、記者ではなかった  TBSテレビ・報道ニュース部「Nスタ」 森岡梢

放送研究と調査(NHK放送文化研究所刊)2011年6月号
東日本大震災発生時 テレビは何を伝えたか(2)  メディア研究部 番組研究グループ
東日本大震災・放送事業者はインターネットをどう活用したか  メディア研究部 村上聖一

放送研究と調査2011年7月号
3月11日、東日本大震災の緊急報道はどのように見られたのか  メディア研究部 瓜知生
東日本大震災に見る大震災時のソーシャルメディアの役割  メディア研究部 吉次由美

放送研究と調査2011年8月号
東日本大震災・ネットユーザーはソーシャルメディアをどのように利用したか  メディア研究部 執行文子

放送研究と調査2011年9月号
原子力災害と避難情報・メディア  メディア研究部 福長秀彦
東日本大震災・被災者はメディアをどのように利用したか  世論調査部 執行文子
大洗町はなぜ「避難せよ」と呼びかけたのか  メディア研究部 井上裕之

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