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スルガ銀行と日本型組織

2018年10月1日

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政治経済情報誌・ELNEOS 10月号寄稿 ほまれもなく そしりもなく 「田部康喜」広報マンの攻防」

 シェアハウスをめぐる不正融資によって名門銀行の裏側が明らかになった、スルガ銀行が外部の弁護士に委嘱した第三者委員会の報告書は、日人々が本の企業経営者と危機管理に携わっている人々が必須の文献である。

 この委員会はその調査において銀行のあらゆる指揮と命令から完全に遮断された「独立委員会」であることに大きな特徴がある。全三〇〇頁を超える報告書は、ふさわしい言葉とはいえないとは思うが、「企業の失敗」の研究文献として今後も繰り返し読み返される傑作である。スルガ銀行のホームページから入手できる。

 不正融資の手口として、シェアハウスを開発する企業と銀行の中間に八〇を超える販売会社を介在させて、融資枠が物件の八割を超えるために、顧客の預金通帳を偽造したり、シェアハウスの入居率を融資の返済に必要な水準に達していない場合は偽装したりするなど、その詳細は報道されている。

 また、取締役ではない執行役員がスルガ銀行の独自の肩書である「Cо―CОО」という名称で、営業全般を牛耳って、審査部門を指示し、人事や従業員の査定まで広範な権限を握っていた事実も明らかになっている。

 この報告書の意義は、スルガ銀行のみならず、日本型組織の悪弊が読み取れるところにある。報告書は次のように述べる。

 「本件の大きな特徴は、これだけの多数の不正行為等が長期間、多支店に渡って継続しており、その間、人事異動もあってこれらの情報も拡散したと思われるのに、誰一人、上司に対する通常の報告もせず、内部通報窓口への通報もしなかったということである」

 シェアハウスの運営会社に対する融資は首都圏のひとつの支店から始まった。運営会社を実質的に経営している人物が、不動産融資をめぐって犯罪行為に手を染めたことや、シェアハウスの採算性から融資の回収が困難になる、という外部からの通報があった。

 シェアハウスの運営会に対する融資をスルガ銀行は禁じたが、支店は販売会社経由の融資を考えつく。

 シェアハウス向けの融資はこうして、現場の暴走という形で拡大する。そして、営業のトップであるCо―CО〇が追認し、拡大する。

 「経営トップ層は、持ち株比率や創業者の権力を背景に全体としてのスルガ銀行は完全に支配していたが、他方、現場の営業部門は強力な営業推進力を有する者、しかも従業員クラスに任せ、その者には厳しく営業の数字を上げることを要求し、人事は数字次第と次のなった」と、報告書は指摘する。

 日本軍の失敗の本質を研究した名著の共著者である戸部良一氏は、「自壊の病理――日本陸軍の組織分析」(日本経済新聞出版刊)のなかで、次のように述べている。

 「軍の政治介入は軍部独裁をもたらしたわけではない。軍が政治力を独占したわけでもない。……また、陸軍の政治介入は、陸軍大臣あるいは参謀創業が強力な指導力を発揮し、組織全体を率いて、政治を壟断するという構図になっていたものでもない。むしろ政治介入の推進力は、省部の中堅幕僚層であった。……陸軍の政治介入で際立っているは、逆説的だが、陸軍という組織におけるリーダーシップの欠落である」。日本の企業や団体でみられる現場の暴走とその追認は宿痾である。

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