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特異な官僚共同体

2018年8月24日

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政治経済情報誌・ELNEOS 8月号寄稿 ほまれもなく そしりもなく 「田部康喜」広報マンの攻防」

 文部科学省の現職局長が受託収賄容疑で東京地検特捜部に逮捕された。報道によれば、逮捕後に官房付となった前局長は容疑を否認しているという。賄賂は、私立医科大学に息子を入学試験の本来は不合格だった点数を上乗せして合格させたというものである。

 犯罪の容疑者はいうまでもなく「推定無罪」である。欧米の報道と決定的に異なるのは、日本のメディアが「関係者の話」として、推定無罪ではなく有罪の構成要件に相当する事実を報じることである。

 今回の収賄事件でも、前局長と私大の首脳陣との会合の内容や息子の受験の点数までもが報じられている。

 文部科学省をめぐっては、昨年に元局長が退職後に有名私大に教授として天下りした裏に同省ОBのあっせんがあった。また、加計学園問題では元事務次官の前川喜平氏が「総理のご意向」があったという文書の存在を明らかにし、同省はいったん否定したものの実際にはあった。

 財務省をめぐっては、森友学園に対する国有地売却にからむ文書の改ざんがあった。これに対して、大阪地検特捜部が捜査に入ったが、起訴には至らなかった。

 森友・加計問題に対する安倍内閣と検察に対する批判は、今回の文部科学省の前局長に対する受託収賄事件によってかき消されたかのようだ。

 日本の官僚制度が特異な共同体になっているのを指摘したのは、天才

 経済・社会学者の二〇一〇年に亡くなった小室直樹博士である。

 「日本社会において高級官僚は特権階級であり、強大な権力を握り、社会的威信も高い。また、彼らなりに優者の義務を心得たつもりになっている。しかも、彼らの本質は、近代的な形式合理的な官僚ではなく、前近代的な家産官僚であり、一種の共同体を形成している」(「田中角栄 政治家の条件」、二〇一七年・ビジネス社刊)

 キーワードである「家産官僚」とは、ドイツの社会学のマックス・ウェーバーが定義した官僚制の分類で、家産国家において、支配者(主君)の下で展開された。これに対するのは、法に則って行動する依法官僚である・

 「官僚共同体に加入を許される方法は只一つ、東大法学部などの日本の一流大学を優秀な成績で卒業し、高等文官試験あるいは国家公務員試験上級甲によい成績で合格して本省採用になるという通過儀礼を受け、官僚共同体の中に、新たに生まれることだ……

 外国には、このような形態の官僚共同体はない。昔の日本にもなかった。きわめて特異な社会現象なのである」(同)

 「家産官僚制」は官庁のみの現象だろうか。「新卒一括採用」と「終身雇用制」、定期入社組と途中入社組の給与や昇格の差別……。大企業の経営層は家産官僚化している。神戸製鋼所のデータ不正事件はついに、東京地検特捜部が不正競争防止法違反の疑いで強制捜査に入った。三菱マテリアルは、品質データ改ざんの責任を取ってトップが退任した。

 「日本いまだ近代国家に非ず」と嘆じた小室博士は、現代日本を予測していたのである。

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