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「伽藍(がらん)型組織」の悪弊

2017年9月4日

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政治経済情報誌・ELNEOS 9月号寄稿 ほまれもなく そしりもなく 「田部康喜」広報マンの攻防」

 安倍晋三内閣に対する、森友学園と加計学園にからんだ疑惑はいまだにはれてはいない。経営危機に陥っている東芝はようやく二〇一七年三月期の決算発表までこぎつけたが、半導体部門の売却の先行きが見通せないために、上場廃止の危機は去っていない。

「権力は腐敗する」や「資本は暴走する」といった言葉でこうした事態を説明するだけでは十分ではない。

 組織の広報部門は、メディアから得られる世論あるいは「世間の常識」をトップに伝えて、危機管理に当たるのはいうまでのない。しかし、最近の政官財の危機に際して広報パーソンの存在感はまったくない。

 菅義偉官房長官に対する、東京新聞の女性記者の舌鋒鋭い質問が話題になっている。メディア側の論理でいえば、政治部が属する官邸記者クラブが、政局や政策などを取材するのに対して、社会部の内閣記者会は、疑惑を追及する、という役割分担である。

しかし、政府の広報担当のトップとして平日の午前と午後の記者会見をこなす菅官房長官に対する、世論の不信が社会部の背を押している。

 このシリーズでは、日本の組織がなぜ繰り返し失敗するかについて、探ってきた。作家の橘玲氏は最新刊の『幸福の「資本」論』(ダイヤモンド刊)によって、その問題について新たな視点を示している。

「伽藍(がらん)型」と「バザール型」の組織というふたつの組織の形態について、橘氏は分析している。寺院の建物の伽藍のなかに、人を閉じ込めたような組織と、バザールのように出入りが自由な空間とルールを持つ組織の対比である。

 日本の官庁や大企業は「伽藍型」である。その組織原理は、「年功序列」による終身雇用と、新卒一括採用による「年次主義」である。

 同期の間の激しい競争を招き、その結果としてミスのないのがよしとされる組織風土が形成される。年功序列で終身雇用であるから、組織を途中で逃げ出せなくなる。

 組織に入ったときは「ミドルリスク・ミドルリターン」にみえるが、組織が衰える危険性が高まっているいま、「ハイリスク・ローリターン」になる。

「伽藍型」の典型は官僚であり、大企業である。メディアもそのなかに含まれる。中途入社者も増えてはいるが、彼らにも年齢や学歴、経験などを加味して見なしの年次が与えられる。組織名に編集局など軍隊の組織名の「局」を冠するのも、伽藍型の特徴である。

 旧日本軍では陸軍大学や海軍大学の卒業成績が一生ついてまわる。現代の国家公務員上級試験の成績順も同様である。

加計学園の獣医学部新設をめぐって、官邸の関与を指摘している、前文部科学省事務次官の前川喜平氏が、上級職試験の四番であったことが伝わっている。上位は旧大蔵省、通産省である場合が多いが、四番であれば将来の事務次官はほとんど約束されていた。

「バザール型」はいまやグローバル・スタンダードである、と橘氏は強調する。

 無責任体制を生む「伽藍型」組織のなかで、広報パーソンはいかにあるべきか。社会にとって自らが何をもって貢献するのか、を常に考えていくしかない。その先には、「バザール型」組織への転身も考えられるかもしれない。       

 

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