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ユビキタス監視社会 ②

2017年8月10日

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政治経済情報誌・ELNEOS 8月号寄稿 ほまれもなく そしりもなく 「田部康喜」広報マンの攻防」

 インターネットの普及によってより自由な空間が創造できるという「ユビキタス」社会の理想は崩れた。米中央情報局(CIA)の元職員であるエドワード・スノーデン氏が暴露した文書は、米安全保障局(NSA)が、個人の通話とメールの受送信先の記録、SNSの履歴など、あらゆるメタデータを収集している事実を明らかにした。

「スノーデン文書」に基づいた調査報道の分野で、英ガーディアン紙とともにその分析と取材に当たった、ジャーナリストのグレン・グリーンウッド氏の著作『暴露』(・二〇一四年・新潮社刊)によれば、NSAの情報は「ファイブ・アイズ」と呼ばれる五カ国によって共有されている。すなわち、米国と英国、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアである。

 さらに、「一般的にアメリカの友好国とみなされる民主国家―フランス、ブラジル、インド、ドイツなど―さえ諜報対象国に含まれていた」という。日本もこれらの国のなかに入っている。政府のみならず、企業、個人の情報も対象であることはいうまでもない。

「スノーデン文書」によって、独のメルケル首相の携帯電話も盗聴されていたことが発覚すると、独政府は間髪を置かずに米政府に抗議した。

 さて、日本はどうか。『暴露』によれば、NSAの「すべてを収集する」という戦略の観点から、運用技術の責任者は二〇〇九年に三沢のある諜報施設について運用能力の向上をほめたたえる。「衛星で感知した瞬間に信号を自動的にスキャン・復調する機能を開発。われわれの計画は“すべてを収集する”というスローガンにまた一歩近づき、今後もさらなる進歩が期待される」と。

 NSAと情報共有の関係にある「ファイブ・アイズ」と日本の関係に変化があったのではないか。NHKの「クローズアップ現代+」が、スノーデン氏の活動を支える米NPОとともに新たな日本に関する十三のファイルに関するスクープであった。

「すべてを収集する」方針のもとにデータベース化された情報から、個人名やメールのアドレスなどで一括して検索できるプログラムが、米政府から日本政府に提供されたというのである。「スパイのグーグル」と呼ばれる「XKEYSCОRE」である。

 番組のインタビューに応じたNSAの元幹部であるトーマス・ドレイク氏は次のように語った。

「日本向けに特別に組み替えたバージョンを提供した。米は日本から情報の収集、分析の結果を共有できる。日本の立場が一ランク上がったことを意味する」

 スノーデン氏本人も登場して、日本人に対して警鐘を鳴らした。

「日本社会は、国民のプライバシーを大事にする国だったが、変わりつつある。世界の国を対象にした、『報道の自由度ランキング』も落ちている。知る権利があって、自由で開かれた社会はある」と。彼は横田基地など、日本の勤務の経験もある。

『暴露』の筆者であるグリーンウッド氏に接触を試みたスノーデン氏がまず要求したのは、メールの監視がほとんど不可能なアルゴリズムを使ったソフトをダウンロードすることだった。

 企業活動に対する共産圏によるインターネットを通じた諜報活動もある。世界はより「監視社会」の様相を深めている。

           (この項了)

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