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「集団思考の愚」の罠

2017年4月19日

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政治経済情報誌・ELNEOS 4月号寄稿 ほまれもなくvそしりもなく 「田部康喜」広報マンの攻防」

「特に集団思考の強いグループに特徴的にみられるのは、結果へのコミットをせず……実行を担保するにあたっては……手続きと年次ヒエラルキーを重視し、無謬性に固執するがゆえに改善を否定し、そして形式主義に基づく組織の操作でその場を乗り切ることを是として信じて疑わないマインドセットである」(「なぜ『異論』の出ない組織は間違うのか」・宇田左近著)

 宇田氏はマッキンゼーのコンサルタント出身で、郵政民営化にかかわり日本郵政と郵便事業株式会社の専務執行役員を務めた。福島第一原子力発電所の事故後に、日本の憲政史上初めて国会に設置された、事故調査委員会において、報告書をまとめる調査統括になった。

 この著作の解説のなかで、調査委員会の委員長である黒川清氏は、次のように指摘する。

「『集団思考型(Groupthink)マインドセット』というのは実に根深い問題だ。『集団思考の愚』というのは世界共通の課題ではあるが、特に日本社会では根深い問題である」

 本稿執筆時点で、東芝の不正経理問題の成り行きや予断を許さない。パソコン部門で始まった問題は、原子力部門の子会社である、米ウエスチングハウスが、日本の民事再生法に相当する「チャプター・イレブン」の適応を申請する方向が明らかになった。

 大阪府内の国有地をめぐる、「森友学園」の問題もまた、補助金申請に際して虚偽の工事費を提出するなど、土地取引の実態解明は進んでいない。国有地を管轄する財務省理財局と、出先機関である大阪財務局が、森友学園に対してどのような対応をとってきたのか、その責任も不明である。

 東日本大震災から六年を経て、あの時に原発事故のみならず、政府の混乱のなかで、黒川氏と宇田氏が指摘した「集団思考型マインドセット」の罠に、日本の組織は依然として陥ったままである。

 調査委員会の参考人質疑などを終えるたびに記者会見を開いた、委員長の黒川氏は、記者たちが公開されているのを見聞きしながら「委員長の言質を取りたがる雰囲気は最後まで変わらなかった」「規制の虜❘❘グループシンクが日本を滅ぼす」)と、日本のメディアを批判する。

さらに、「基本的に、日本のジャーナリストは、ジャーナリストとしての基本的な姿勢を教育、訓練されていないし、認識していないか、あるいは認識していても発揮できないと思っている。問題を『自分のこと』として真剣に考え、どう行動するかが問われているのだ」と述べる。

広報パーソンは、そうしたジャーナリストたちを御しやすいと考えてはならない。経営層や広報部門が意図する方向で報道されることが、広報戦略である、という誤った認識が主流になることを恐れる。

「集団思考の愚」に陥ってはならない組織の要が、広報部門である。企業の危機を先送りできても、いずれ組織は死に至る病に侵される。宇田氏は言う。

「『その時自分だったらどうするか』を一人称で考えてみる必要がある。国民として、組織のトップとして、あるいいは組織の一員として」と。

 

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