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ネットメディの裏側

2017年1月16日

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 エルネオス 田部康喜 「広報マンの攻防」 寄稿

   ネット・メディアに対して、どのように臨むのかは、広報パーソンにとって課題となって久しい。

 インターネットの先端企業の広報室長に就任した十数年前、ネット・メディアの若手記者が大手新聞社から転職した経歴の持ち主であることを知ったときには、いささか驚いた。それもひとりではなかった。

 彼らが書いている記事の影響力については、部下たちから学んだ。一般的な新聞は若者たちの読み物ではなかったのである。

 時代はさらに進んでいる。「キューレーション・サイト」と呼ばれるネット・メディアの「グノシー」はいまや上場企業である。「キューレーション」とは、博物館や美術館の学芸員が展示物を目利きするように、ニュースを集めてみせる、意味である。

 大手新聞や雑誌の記者や編集者から、こうしたネット・メディアへの転職の流れは強まる一方である。この分野の起業の動きもある。

 ネット・メディアの真贋(しんがん)を見極める方法はあるのか。ネット・メディアの質に関する重大な事件が起きた。

 IT業界大手のDNAが運営する「キューレーション・サイト」が閉鎖に追い込まれた。最初に問題になったのは、健康サイトの「WELQ」サイトだった。医療情報に関して、専門家の点検を受けずに、誤った記事が掲載されたのである。最終的には旅行に関するサイトなど、計九サイトが閉じた。

 これを発端にして、リクルートホールディングスもアニメに関するサイトなど、計四サイトのほとんどの記事を、サイバーエージェントも同様の措置を取った。

 こうしたまとめサイトの記事がどのように作られていたのか。ネットに詳しい、個人投資家・作家の山本一郎氏の論考はメディア業界全体にも衝撃を与えた。

「リライトツール」と呼ばれるソフトが、元凶である、と山本氏は指摘している。ネット上で一万五〇〇〇円から四万円で売られているという。

 このツールが要求する基準によって、ネット上の情報を入れ込むと、自動的に何種類ものリライトした原稿ができる、というのである。

 さらに、山本氏は「これらのシステムを転がすだけでは……マウスをポチポチやらないといけません。なので、コピペとリライト作業をもっと効率的にするために『お目当てのキーワードを入れるだけでネットから品質の高い記事をコピーしてきてリライトソフトにぶち込んでくれるBОT』が出回ることになります」という。BОTとはロボットである。

 山本氏によると、こうしたBОTとリライトソフトの組み合わせで、一日二時間サーバーを稼働させるだけで、約二〇〇〇字数の記事が三〇〇本できるという。

 既存のメディアの世界でも「ロボット・ジャーナリズム」は最近の論点である。AP通信が企業の決算報道に当たって、単なる決算単身はロボットに任せ、記者は深い分析記事を書く体制を整えつつある。

 広報パーソンが向き合うのは、血が通った記者ではなく、BОTである時代である。

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