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震災地が変える企業のCSR 

2016年6月13日

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寄付から持続性ある産業育成へ

フジサンケイビジネスアイ 高論卓説 寄稿。

 東京・表参道に近い国連大学本部の広場は、週末のファーマーズマーケットがすっかり風景になじんできた。全国各地から野菜やはちみつ、特産品の出店があり、いまでは外国人向けのガイドブックに紹介されるほどだ。

 そんな国連大学のセミナー室で10日に開かれた報告会は、広場の賑わいにふさわしい。東日本大震災後に、福島県いわき市にあるNPOのザ・ピープルが取り組んできた、有機栽培の木綿について、現地の栽培農家やこの活動を支援してきた企業と、ボランティアとして参加した人々が集まった。

 受付の入り口には、有機木綿を原料にした手ぬぐいやTシャツなどが展示、販売されていた。今春の種まきで5回目の栽培に入る。首都圏での報告会は初めてである。

 NPOの代表の吉田恵美子さんは、それまでの活動の中心だった、古着のリサイクルの延長線上で被災者に対して衣類などを提供した。その過程で農家が原子力発電所の事故による風評被害によって、生産物が売れなくなって耕作放棄地が広がる現状につき当たった。首都圏のボランティア団体との交流のなかで、有機木綿の存在を知り、いわき市での栽培を思い立った。地元の農家に栽培の経験者は皆無でゼロからのスタートだった。

 吉田さんは「地元の私たちが事業を持続させるために努力すると同時に、首都圏の企業やボランティアの方々の協力なくして、報告会を開くまでこぎつけることはできなかった」と、挨拶した。大手流通企業などが栽培の手伝いにボランティアを送ってきた。木綿畑の一部の運営費を出資するだけではなく、従業員を送ってくる銀行もあった。ボランティアの数は、延べ1万5000人に及ぶ。栽培地は、いわき市から隣町の広野町や南相馬市などにも広がっている。「ふくしま潮目」というブランドで、都内の大手百貨店で販売会を開くまでになった。

「木綿製品の企業の方から、コストや在庫についてアドバイスをもらったのが力になった」と、吉田さんは感謝する。

 東日本大震災後の企業のCSR(Corporate Social Responsibility=企業の社会的責任)活動は、被災地に対する単なる寄付ではなく、新しい持続的な産業を育てる方向に大きく変化している。キリンビールグループによる「キリン絆プロジェクト」は、持続的な農林水産業を育てる基本的な戦略を立てている。地元の特産物を掘り起こして、市場にどのような手法で投入すれば、売れるのか。マーケティングの側面のノウハウを支援する。福島県産の梨を原料にした自社製品の飲料なども開発した。

 三菱商事復興支援財団は、福島県郡山市でワイナリーの設立を支援して、今春ロゼのスパークリングワインとシードルの初出荷にこぎつけた。三菱商事はぶとう栽培のボランティアに従業員を派遣した。

 CSRの対象の持続性に注目した活動として、米国ではCSV(Creating Shared Value)という新たな概念が提唱されている。

 

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