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NHK BSプレミアム「はぶらし 女ともだち」

2016年2月21日

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内田有紀と池脇千鶴の「心理劇」は背筋が凍る

イヤミスには終わらないのか

WEDGE Infinity 田部康喜のTV読本 寄稿    http://wedge.ismedia.jp/category/tv

 NHK BSプレミアム「はぶらし 女ともだち」(毎週火曜夜11時15分)は全8話中の5話が、7日に一挙再放送された。高校時代の同級生だった、真壁鈴音(内田有紀)と古澤水絵(池脇千鶴)が繰り広げる「心理劇」は、回を追うごとに視聴者を増やし、初回からの展開を観たいのだろう。

 第1話「予感」から欠かさず観ている私もドラマの展開が待ちきれない。そればかりか、初回から背筋に震えが走る。

 シナリオライターとして成功を収めている鈴音(内田有紀)の自宅のマンションに、雨のふる深夜、水絵(池脇千鶴)が6歳の息子の耕太(手塚勇輝)を連れてやってくる。「夫と離婚して働いていたが、リストラされて、再就職口を探す2日間だけ泊めて欲しい」というのである。

 鈴音にとって、水絵は高校の合唱部で一緒だったという以外は、さして親しい仲ではなかった。それが20年ぶりに訪ねてきたのだ。深夜でもあり、断りづらかった鈴音は、水絵親子をマンションに入れる。

 「はぶらしがなくて、あったら私と耕太の分を貸してくれない。明日にはコンビニで買って返すから」と、水絵はいう。

 鈴音は買い置きの、はぶらし2本差し出す。

 翌朝、水絵は借りた、はぶらしを水絵に差し出す。

 「どうもありがとう。これ返すから」と。

 新品を返すならわかるが、使ったものを平然と返す水絵に、鈴音はちょっと表情を固くする。

 「はぶらし 女ともだち」の原作は、近藤史恵である。脚本は横田理恵と森山あけみ、鹿目けい子の3人が回ごとに担当している。

 ドラマは、原作にはない鈴音の不倫相手である、プロデューサーの柳井護(尾身としのり)らを加えて、水絵のよって鈴音の日常が崩れていく様子がより浮かび上がる。

 水絵がやってきた2日目の朝、鈴音が起きると時刻はすでに午後3時半を回っている。頭が重いのは、前夜に水絵とふたりでワインを飲んだなごりかと思う。

 水絵親子はマンションにはいない。ふたりは橋の欄干のそばにすわって、コンビニで買ってきたと思われるサンドイッチを食べている。

 マンションに戻ってきた水絵は、再就職活動がダメだったことを鈴音に告げて、1週間だけおいてもらえないか、と頼むのだった。鈴音は押し切られる。

 その後、鈴音がたまたま水絵のバックにつまずいて、中身が散乱したときに、睡眠薬がはいった袋をみつける。

 「水絵がワインに睡眠薬を入れたのではないか」と、鈴音のなかに疑惑が広がっていく。

 そして、耕太が深夜に突然発熱する。鈴音は水絵とともに、耕太をタクシーで病院に連れていったばかりか、保険証のないふたりのために治療費も負担する。

 マンションに帰ってからは、水絵の再就職活動のために耕太の世話をする。

 ところが、水絵が耕太のために用意したうどんの替わりに、いっしょにカップ麺を食べた結果、耕太の体調が悪化する。

 帰ってきた水絵は、鈴音を責め立てる。水絵の髪が明らかに美容院にいってきたことがわかると、鈴音は水絵に反発する。

 「就職活動をしていたと思ったら美容院?」

 「鈴音は2週間おきにカットにいっているからわからない。私はね、4カ月もいってなかったのよ。就職するには身だしなみも大事なのよ」

 耕太の体調が悪化したこともあって、鈴音は水絵の再就職がきまるまでマンションにいることを許すのだった。

 鈴音の日常に水絵が徐々に入り込んで、鈴音の生活は崩されていく。ドラマのシナリオに危うく穴をあけそうになった。さらに、スランプに陥る。

 不倫相手のプロデューサーの柳井(尾身としのり)は、鈴音をカバーするために別の女性脚本家を入れる選択をする。

 柳井は水絵を呼び出して、当座の生活資金だとして、カネを差し出して鈴音のマンションから出ていくように頼む。水絵のために鈴音のテンポが狂って、創作活動に支障がでているというのである。

 水絵は激高して、カネを地面にたたきつける。

 「調子を狂わしているのはあなたのほうでしょ。不倫をして。女の37歳って、どういう時期かわかる?」

 水絵役の池脇千鶴は、年齢を重ねるごとに女優として脱皮を遂げている。不動産会社の美少女のCMで知られるようになり、NHK朝の連続テレビ小説「ほんまもん」(2001年)の主役も演じた。

 そして、日本アカデミー賞優秀女優賞を獲得した「そこのみにて光輝く」(2014年)の大城千夏役である。主役の佐藤達夫役の綾野剛とともに、海辺の街で心理劇を繰り広げる。池脇は貧しい家庭のためにからだを売り、病気で寝込んでいる父に対するすさまじい介護の様子を淡々と演じている。

 読後に嫌な感じが残るミステリーを「イヤミス」と呼ぶ。原作の「はぶらし」のラストシーンは、そうとばかりはいえない。ドラマの展開はイヤミスであるが、果たしてどうか。

 松本清張はかつて、森繁久弥との対談において、代表作の「砂の器」の映画(野村芳太郎監督・1974年)が小説を超えた映像であることを高く評価している。

 小説とそれをもとにした映像作品は、まったく別の表現形式を持ちながら、同じテーマを読み者と観る者に伝える。

 

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