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NHKスペシャル「シリーズ・激動の世界」

2016年2月24日

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米国の一極支配が崩れた先に見える未来

テレビの解説能力はますます高まる

 WEDGE Infinity 田部康喜のTV読本 寄稿    http://wedge.ismedia.jp/category/tv

NHKスペシャル「シリーズ 激動の世界」は、米国の一極支配が崩れた先に見える未来を描いている。第1回「テロと難民~EU共同体の分断~」(1月10日)、第2回「大国復活の野望~プーチンの賭け~」(1月11日)の放映を経て、第3回「揺れる“超大国”アメリカはどこへ」(1月16日放送予定)に至る。

  大越健介キャスターをメインに据えて、各国の国際政治学者に対するインタビューと最新と過去の映像を組み合わせた、ドキュメンタリーは優れた解説番組である。「テレビは速報に、新聞は解説に優れたメディアである」という評価はすでに過去のものとなったばかりか、テレビはその解説能力を日々高めている。

 新聞の部数が減少傾向をたどっている大きな理由として、インターネットの普及があげられるが、テレビの報道能力の向上もまたとりあげられなければならない。朝刊を手にとって既視感がある理由でもある。

 「激動の世界」は、まず第1回の冒頭において、世界のトップの象徴的な言葉をフラッシュのように折り込んでいる。

 「我々は世界の警察官ではない」(オバマ・米大統領)

 「新しい秩序か、あるいはルールなき世界か」(プーチン・ロシア大統領)

 「我々は歴史的な試練に立っている」(メルケル・独首相)

 国境をなくして、自由な往来によって、豊かな社会を築いていこうという、欧州の理念が揺らいでいる。パリの同時多発テロによって、難民の受け入れに積極的な国は、ドイツのみといってよい状況になった。

 ハンガリーはドイツとの国境に、高さ4メートル、延長175キロのフェンスを築きつつある。

 ドイツに入っている難民は1日約1万人、昨年は100万人を超えたと推定される。第2次世界大戦後、最も多い難民を受け入れている。

  旧東ドイツのドレスデンのルポルタージュでは、極右勢力とされる「ペギーダ」に肉薄する。これまでは、低賃金や失業した人々の支持が中心だったのが、中間層にもその支持が広がっている。支持者は2万5000人、インターネットで賛意を表明している人は20万人とされる。

  代表のルッツ・バッハマンが一昨年に設立した。彼は広告代理店を経営するビジネスマンである。

  難民の受け入れに融和的なメルケル首相の退陣を訴える。

  ドイツにおいて、いまや過去の移民と難民を加えると計1600万になり、全体の2割を占めるまでになっている。

  代表のバッハーマンは、大越のインタビューに答えて、EUの状況を次のように表現する。

  「EUはスープに例えられる。加盟国のアイデンティティ(自己同一性)を失ったごった煮状態である。おなかはいっぱいになるが、誰にとってもおいしいものではない」

  「ペギータ」の支持者が、近所のホテルが難民を受け入れる施設となることに反対しようと、公園で親子連れに支持を訴える。

  妻と子を連れた男性は、大声をあげて反論する。

  「難民は被害者であり、受け入れるべきだ。そんな考えならペギータにいってしまえ!」

  EUの寛容性は失われている。ドイツ国民は分断されている。

  地政学者のドミニク・モイジは次のようにいう。

  「メルケルは正しい。しかしリスクを負った。今後、難民をコントロールしながら受け入れていかなければならないだろう。テロと難民を意図的に結びつけるのは、ポピュリストだ」

  政治学者のクラウス・レゲヴィーはいう。

  「欧州は裂け目が生じている。自分の国のなかにこもろうとしている。EUの統合は危機を迎えている」

  第2回は、前回のEUの分断の危機に乗じる形で、ロシアが大国を目指している様が描かれている。

  ドキュメンタリーは、プーチンに近い実業家であるコンスタンチン・マロフェーエフに迫る。彼は不動産や株式などで富を築いたビジネスマンである。

  ロシアによるクリミアの実行支配の作戦において、マロフェーエフが資金などの援助をしていた事実が指摘される。大越のインタビューに対して、彼は「あくまでも人道支援だ」といって譲らない。

  しかし、ウクライナ政府が公開した、クリミア作戦を行ったふたりの軍人と彼の電話内容から、クリミア占領にあたって、多数の死傷者をだしたという報告に対して、彼は「祝日にすべきだな」と語っているのである。

  欧州の分断の動きをプーチン政権は、EUとNATOに対抗する手段として利用しようとしている。

  かつて内戦によって20万人が犠牲となった、ボスニア・ヘルツェゴビナ政府は、EUとNATOに加盟する方向性を表明しているが、プーチンはそのセルビア人の自治地域に標準を絞っている。セルビア地区の指導者は「独立を問う投票を」とあおっている。ロシアも経済支援をしている。

  プーチンに近いマロフェーエフと、フランスの極右政党の国民連合の幹部と会談する場面を、カメラは追っている。国民連合に対して、マロフェーエフはおととし11億円の支援をしたといわれている。

  国民連合の幹部は、米国一極支配に対抗するために「ロシアをもっと見習うべきだ」と言い切る。

 今回のNHKスペシャルは、時空を超えて、映像を織りなすテレビのドキュメンタリーの秀作である。

 

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