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フジ「探偵の探偵」 北川景子のアクションの迫力

2015年10月9日

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シリーズ化に期待

今夏のドラマは実りが多かった

 WEDGE Infinity 田部康喜のTV読本 寄稿    http://wedge.ismedia.jp/category/tv

 今夏のドラマは実りが多かった。日本テレビの「デスノート」は、主人公の夜神月(やがみらいと・窪田正孝)が、ニア(優希美青)が仕掛ける罠にはまって、燃え上がるガソリンの炎に包まれて終わった(9月13日・最終話)。死神のリュークとレムは、月光の空に飛び立っていった。

 デスノートは、炎をともに燃え尽きたようにみえたが、どうだろうか。高い視聴率を背景として、シリーズ2がいずれ放映されることだろう。

  テレ朝の「刑事7人」(9月9日・最終話)は、主人公の天樹悠(東山紀之)の過去の人生がすべて明らかになったわけではない。捜査チームのひとりである法医学者の堂本俊太郎(北大路欣也)は、米国の大学に招かれて離日した。期間は1年である。

 秋からは「相棒」のシリーズ14が始まる。「刑事7人」シリーズと改編ごとに入れ替わる編成はどうだろうか。

  フジテレビ「探偵の探偵」もまたシリーズ化に期待したいドラマである。9月17日に最終話を迎える。

 原作は松岡圭祐の小説である。講談社文庫の第1巻から3巻までが今回のシリーズである。すでに第4巻が刊行されていて、物語はさらに深く広く展開されている。

  「探偵の探偵」は、悪徳探偵をあばきだす探偵である。主役の紗崎玲奈(ささきれな)を北川景子が演じている。玲奈は妹の高校生だった咲良(さくら、芳根京子)を、ストーカーによって殺された。妹を守ろうと家族は咲良を遠縁の親戚に預けたのだったが、謎の探偵によって居所がそのストーカーに知らされたのである。

 ちなみに、咲良役の芳根京子は、TBSの「表参道高校合唱部」の主役である。

  「探偵の探偵」である玲奈(北川景子)は高校を卒業してすぐに、須磨康臣(井浦新)が経営する探偵事務所のスマ・リサーチ社が併営している、探偵の養成コースに入る。

  須磨は玲奈の目立ちすぎる美貌を目にして、影のように動く探偵には向いていないという。玲奈はいう。「探偵になりないのではない。探偵のすべてを知りたい」

  玲奈は、咲良を死に追いやった探偵を追いつめたいのである。彼女はその探偵を「死神」と呼ぶ。

  悪徳な探偵を排除して、業界を浄化したい須磨と玲奈の思惑が一致して、玲奈は探偵の養成コースを修了すると、スマ・リサーチに入社して新設の「対探偵課」のたったひとりの課員となる。

  原作の玲奈の容貌とスタイルは、主人公役の北川景子の姿と寸分も異なっていないといえるだろう。あたかも北川のために書かれた小説のようである。

  玲奈は「死神」がカゲにいると思われる事件に次々と巻き込まれていく。悪徳探偵やハングレと戦う北川景子のアクションが素晴らしい。北川の過去の作品にはなかった、新しい彼女の魅力である。

 戦いながら、顔や腹、腕や足を痛めつけられ、血を流す北川の演技は壮絶である。表情をいっさい変えない。内心の苦悶を決して顔にださない。クール・ビューティーの北川の転機となる作品である。

  最終回に向かって展開する事件は、郊外のDVシェルターから12人の女性が連れ去られた出来事である。

  ハングレ集団が、女性たちの夫や恋人から1人当たり300万円の支払いを受けて、彼女たちを彼らに引き渡そうとしていた。

  いくつかの事件を通じて、信頼し合う仲になった警視庁の警部補の窪塚悠馬(三浦貴大)と、連れ去られた女性たちを追う。

  ドラマのなかで、探偵として玲奈が駆使する手法は、防犯カメラから逃れるために雲母を混入したスプレーを自分の顔にかけて反射を利用して、特定化されるのを避けたり、郵便受けの手紙類を抜き取って、公共料金の支払先に偽の電話をかけて人物を特定したり、探偵の違法ともいえる手法が出てくる。

 小説ではさらに過激な手法がいくつも出てくるが、ドラマでは公序良俗の関係からギリギリの線であるが、ドラマの緊張感を十分に高めている。

  玲奈と警部補の窪塚は、女性たちの救出に成功するが、窪塚はハングレのひとりにナイフで刺されて死ぬ。

 玲奈がハングレに追われて、窪塚の家にかくまわれた時に、小学1年の窪塚の娘と授業参観に行くことを約束する。窪塚が死んだあと、玲奈はその娘の教室に現れる。

  妹を死に追いやった「死神」を探すために、感情を押し殺している玲奈の心のなかに、暖かい血が流れている瞬間を、ドラマが描く時、北川の演技はさらに深まっていく。

  第10話(9月10日)に至って、ついに「死神」はその姿を玲奈の前に現わした。DVシェルターから救い出した市村凛(門脇麦)が、再び夫に追われているのをかくまったのだったが、それは凛の罠だった。門脇麦は、連続テレビ小説「まれ」で希(土屋太鳳)の友人役を演じる。映画では多彩な演技を見せる注目株であり、凛役の狂気を秘めた演技もまた驚かせる。

  凛こそ、探偵としてDV被害者の身元を洗い出した張本人であった。そして、玲奈の妹の咲良を死に追いやった探偵なのだった。

  最終回で玲奈は、本望を遂げることができるだろうか。そして、彼女の人生はどうなるのだろうか。

 

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