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コメディアンヌ・仲間由紀恵の新鮮な魅力

2015年6月18日

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NHK「美女と男子」 イケメン・町田啓太と描く芸能界裏事情

 WEDGE Infinity 田部康喜のTV読本 寄稿

コメディアンヌ・仲間由紀恵がもどってきた。NHK「美女と男子」は仲間が演じる芸能マネジャーの沢渡一子と、向坂遼役の町田啓太が、芸能界に挑む物語である。

 連続テレビ小説「花子とアン」で仲間が演じた、恋多き女の葉山蓮子役は酒に溺れて、男性遍歴を繰り返す汚れ役でもあった。

 「美女と男子は」は4月14日からスタートして、毎週火曜(午後10時)放映の20回が予定されている。ゴールデンタイムの最近の連続ドラマとしては、長丁場である。

 阿部寛とのコンビによるドラマ・映画の「TRICK」で、下手な奇術師を演じてコメディアンヌとしての才能を見せた仲間は、いうまでもなく大河ドラマ「功名が辻」の山内一豊の妻役など、演技派の女優でもある。

 「美女と男子」は、そんな仲間が新しい魅力のある演技に挑戦している。

  大手IT企業・班目(まだらめ)コーポレーションで働く沢渡一子(仲間)は、仕事はできるが周囲と人間関係をうまくとれない。いわゆる「上から目線」のサラリーパーソンである。一子の才能を惜しむ、上司の塩田充(浅野和之)は社長の班目晴彦(草刈正雄)が出資している、下町の小さな芸能プロダクションに出向させて、人間として成長させようとするのだった。

  東京スカイツリーを近くに臨む、「ひのでプロモーション」が、一子の新しい職場である。社長の並木昌男(森本レオ)と事務・経理の緒方由実(黒坂真美)のふたりだけの事務所。一子はチーフ・マネジャーとなる。

 所属しているのは、かつて「ハローマイラブ」というロックをヒットさせた歌手の、たどころ晋也(高橋ジョージ)が世間に多少は知られているだけで、あとは手の撮影が専門のパーツモデル、声優、自称グラビアアイドル、といったメンバーである。

  工事現場の交通整理をしていた、向坂遼(町田啓太)を路上でスカウトした一子は、「ふたりでレッドカーペットを歩きましょう」と告げる。

  ドラマは、一子と遼が芸能界に挑戦する姿を、一子役の仲間のコメディアンヌぶりを交えて、真面目にかつコミカルに進展していく。笑いあり、涙あり――田渕久美子の脚本は喜劇の筋道の真ん中を歩んでいる。

  一子の売り込みのかいもあって、遼は長時間のサスペンスドラマの端役に起用される。第3回「そのセリフに、愛を。」(4月28日)である。

 遼の役は、中華料理屋の出前。主役で犯人役の中里麗子(真野響子)は、過食症でたくさんの料理を頼んでいる。テーブルに料理を並べながら、遼のセリフは「あんた、おかしよ」の一言だった。

 巨匠といわれる監督がなんどもダメを押す。「愛がない」というのである。

 遼も一子もその意味がなかなかわからない。

  犯人が自首するきっかけが、そのセリフであり、自分の愚かさにきづくきっかけとなる。ほかの時代劇ドラマのスタジオから、一子が持ち出してきた「愛」の旗指物がおかしい。大河ドラマ「天地人」で、主人公の直江兼続が掲げた「愛」のパロディーである。

 そもそもドラマの題名が「カショクの女」とあって、まさか過食とは、と一子は驚くのだった。

  第4回「涙のハローマイラブ(5月5日)」は、遼が同じ事務所の、たどころのデビューと一曲だけのヒット曲にまつわる再現ドラマを演じる。たどころの人生について、インタビューとこのドラマが交互に構成されている。たどころは、ヒットしたあと生活が乱れて妻子に家をでていかれる。一子は話題作りに妻子にも番組に登場することを頼みにいくが、断られる。

  遼の演技はプロデューサーから高く評価される。ただ、「ハローマイラブ」を歌う段になって、遼が音痴であることがわかる。微苦笑である。

  そして、たどころの娘が、花束をもって事務所を訪れる。美しく成長した娘を涙で迎える、たどころ。花束は当然、自分のところに持ってきたものと思った。しかし、それは遼に差し出された。「ファンになりました」と。涙と笑い、である。

  ドラマの進展に、芸能界の裏事情がスパイスとして効いている。タバコを吸えない一子が、テレビ局のタバコ部屋におしかけて、プロデューサーに遼を売り込む。ドラマの配役が実は、若いサブディレクターの目利きによる。

 遼がドラマの主役に内定しそうになって、番組のディレクターを中心にして、事務所が接待するシーンも芸能界のパロディーである。一子に抱き付いたディレクターが、女優にならないかとくどく。

  第6回「絶対とるわ!初主役」(5月19日)のひとこまである。この回のラストシーンに至って、一子は人生最大の窮地に追い込まれる。

  遼と居酒屋で飲んで、帰宅しようとして、物陰で夫の沢渡敬吾(瀬川亮)と妹の日邑梨花(徳永えり)がくちづけをしているのを目撃したのだった。

 その光景に先にきづいた遼が必死に隠そうとしている姿がおかしい。腰に抱き付いて、帰る方向を変えようとするのだった。

  さて、一子と遼は、芸能界をうまく潜り抜けられるだろうか。回を追うごとに、脱皮していくような新しい仲間がみられる。

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