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「第三者委員会」の死角

2014年12月10日

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ELNEOS 12月号寄稿。

 企業が危機に際して、外部の弁護士や有識者によって事態の要因を分析、かつ改善策の提言をしてもらう「第三者委員会」はいまや定石となった。

 個人情報の漏えい事件を起こした、ベネッセコーポレーションは十月中旬に第三者委員会の勧告を受けて、新たに情報セキュリティ監査委員会を設置した。東京工業大学名誉教授の辻井茂男氏を委員長として、この分野の専門家四人で構成している。

 半年に一度委員会を開催して、経営トップに助言するという。

 第三者委員会の在りようを示すひとつの典型的な事例である。

 牛丼チェーンの「すき家」を展開している、ゼンショーホールディングの第三者委員会は、全面的な労働環境の改善を提言したのに対して、経営トップは深夜営業の店舗の多数を閉店するなど、業績の大幅な下方修正を伴った改革に乗り出した。

 サービス残業や深夜の店舗をひとりで運営するシステムなど、「ブラック企業」のレッテルを張られた、レピュテーション・リスクを回避するための厳しい選択だったと思う。

 危機管理の最前線に立つ広報パーソンは、第三者委員会の設立に深くかかわる。どのような視点から、委員会の在りようを考えていけばよいのだろうか。

 ここではまず、福島第1原発の事故に関する政府事故調査委員会の柳田邦男氏の証言を紹介したい(NHKスペシャル「原発事故調最終報告書~解明された謎残された課題~」)。

 事故の分析の視点として、柳田氏は三点を提示する。原発のシステムそのものと、事故が起きた場合に被害の拡大を防ぐ消防や重機の準備など、システムを支援する視点がある。そして、大事な視点は地域の安全つまり住民側からの視点である。それは汚染対策など広範囲に及ぶ。

 システム側からだけでは事故の真相が明らかにならず、住民の視点から事故を分析するとともに、安全対策を提案したところに、政府事故調の存在意義があった、という。

 企業の危機に置き換えていうならば、第三者委員会は法令や広い意味でのコンプライアンスに違反したかどうかを問うばかりではなく、消費者の視点から企業の問題点を洗いなおさなければならない、ということである。

 第三者委員会の調査と勧告を受けて、企業がお客様に対して再発の防止を誓うのも、これまた定石である。しかしながら、委員会の段階で消費者の視点から検討を加えられている調査報告書は少ないのではないか。

それは、委員会の構成が法律家を中心として大学教授らの有識者で固められているからである。

 企業の側にそうした消費者の意見を反映させたいと考えがあったとしても、適任者を探すのが難しいという面もあるだろう。

 ソフトバンクの子会社が直面した個人情報漏えい事件では、第三者委員会に生活ジャーナリストの高橋伸子氏に加わっていただいた。婦人雑誌の記者・編集者の経歴の持ち主であり、金融商品の取引に消費者保護の仕組みを導入することを、先駆的に唱えられた。柳田氏の視点に通じるものがある。

 

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