子会社のオリエントコーポレーションが反社会的勢力に融資していた問題をめぐって、みずほ銀行の責任が問われている事件は、本稿を執筆している一一月中旬時点でも収束の気配がみえない。
みずほ銀行の一連の事件については論じ尽くされたかにみえる。しかしながら、このシリーズで取り上げてきた「ビッグデータ」の視点と、ほまれもなくそしりもなく、レピュテーション・リスクの回避に取り組んでいる広報パーソンの視点からみるとき、企業の教訓となる新たな論点が浮かび上がってくる。
今回の事件について、みずほ銀行の第三者委員会の弁護士たちがまとめた「提携ローン業務適正化に関する特別調査報告書」から、企業の普遍的な課題を読み取ることができる。一〇月末に対外的に公表され、みずほ銀行のホームページからダウンロードが可能である。
この事件に関する報道と識者による原因の分析を振り返るとき、みずほ銀行が旧日本興業銀行と富士銀行、第一勧業銀行の三行の一体化が遅れていた事実が指摘される。
企業が直面するリスク管理に関して、その企業の特殊性や、経営層の人的な素質や経験のなさに言及することからは、その企業の再生は困難である。
みずほ銀行の第三者委員会の一〇〇頁を超える、膨大な調査報告書を
読んで、まず不信に思ったのは、委員会の弁護士たちの事情聴取の対象者に広報部門と法務部門の責任者が含まれていないことである。
みずほ銀行の組織図をみると、法務部門はリスク管理部門のなかにあり、この部門の責任者に対する聴取が行なわれている点は、差し引いて考える必要があるだろう。
しかしながら、広報部門に関する聴取がないのはなぜか。
そもそも、みずほ銀行の組織図によると、プロフィット部門とそれ以外を分けて、広報と法務は「それ以外」である。経営学者のドラッカーを持ち出すまでもなく、プロフィット部門とノン・プロフィットを分かる考えは、企業の社会的責任を果たす観点からは、すでに過去のものある。
企業の組織はすべて、価値を創造する。
みずほ銀行の組織の立て直しを提言している第三者委員会には、企業のレピュテーション・リスクを回避する重要なファクターである、広報の役割を認識していない。法律を順守するばかりではなく、社会の常識を背にして企業に迫るメディアに対する、企業の構えについて理解していない。
さらに、報告書は今回の事件の根幹である、反社会的勢力に関するデータと融資対象者の突合せの問題についても、分析が十分ではない。みずほ銀行にあったデータベースの量的かつ質的な分析がなされていない。「ビッグデータ時代」のありようから学んでいない。
それは、この調査が金融庁の検査という法律に基づいた行政行為を受けたものであり、なおかつ刑事事件に発展する可能性があり、弁護士は法律的な立場から、問題にアプローチしているからである。
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(この項了)