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選挙戦における「空中戦」ってなに?

2013年8月5日

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 参議院選挙における与野党の攻防を受けていま、自民党の党三役の交代や内閣改造の可能性、野党の再編論議が浮上していることであろう。

 ネット選挙が解禁されてから最初の国政選挙が、中盤に差し掛かる時点で本稿を書いている。

 大手紙の序盤戦の情勢分析では、与党の圧倒的な勝利とみられている。野党は自らの劣勢をネット戦略によって挽回できたであろうか。

 野党第一党の民主党のネット選挙戦略を振り返ってみよう。

その検証に入る前に、民主党が今回の参院選に向けた政策をまとめるにあたって、ネットを活用して、党本部ばかりではなく、地方の党員も含めて議論を繰り広げたことは評価できる。

集約化された政策が、この党を構成するさまざまな立場の勢力の調整の結果、その主張があいまいである、という批判はあったにしても。

ベンチャー企業の広報マンとして、創業者が将来ビジョンをつくるにあたって、約二万人の従業員のほぼ全員がメールやソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)などのネットと現実の会議を組み合わせて成し遂げたプロセスを知っているからである。

ネットを通じた論議を通じて、組織の目標が明確になっていくと同時に一体感がスピード感をもって醸成されると思う。

今回の民主党の取り組みはおそらく日本の政党では初めてのことではないか。

そうした政策作りにおいてネットの先駆者である、民主党のネット選挙戦略もまた、政党のそれとしては先端をいくものであった。

ただ、その先行性は、有権者の平均的なネットの知見を越えていたのではなかったか。

戦略に組み込んだ、「アメーバ―ピグ」は仮想の街のなかで、自分の分身のキャラクターが動き回れるSNSある。「AR」(拡張現実)技術は、スマートフォンなどをかざすと映像情報がみえる。「民主党放送局」はネット配信のユーストリームを活用している。

選挙のプロを自認するコンサルタントや政治家の周辺の人々が口にする言葉のなかで、もっとも違和感のあるのが、「空中戦」である。

その定義は極めてあいまいで感覚的に使われている。ポスターを貼ったり、街宣活動をしたり、組織的な電話による投票の呼びかけなどが、「地上戦」と呼ばれる。

 「空中戦」とはメディア対策つまり広報戦略をいっている。

 そもそも戦争において、陸上戦も空中戦も同じ戦闘である。

 冗談ではなく、選挙のプロたちのいう「空中戦」とは、放送を念頭において空中を飛ぶ電波をイメージしているようだ。驚くべきことにも。

 このシリーズで繰り返し述べているように、企業活動がそうであるように、政党と政治家の政治活動と広報戦略一体不可分のものである。

 参院選挙において、それぞれの政党が獲得した議席について、ネット戦略の効果を測定することは難しい。

  しかしながら、「空中戦」理論から抜け出ない政党と政治家に将来がないのは間違いない。 

(この項了)

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