参議院選挙はまもなく公示日の七月四日を迎える。その前哨戦となる東京都議会選挙の選挙戦、街宣車のウグイス嬢の声を遠くに聴きながら本稿を書いている。
わたしはいま、友人の紹介で参院選の比例区に立候補予定の人物の後援会の末席で、広報戦略などの助言をしている。
そのひとのフェイスブックをさきほど見ていると、都議選の候補者の応援のシーンの写真とともに、それから地元の北関東の講演会など、東奔西走する様子が描かれている。「いいね!」ボタンを押す。
この候補予定者は、インターネットの草創期からネットによる政策の発信に取り組んできた。無料サービスのブログにも取り組んできた。メルマガも十年以上にわたって毎週のように支援者に送っている。フェイスブックをはじめたのも早い。ネット選挙の解禁に合わせて初めて、ツイッターでつぶやいている。
こうしたネット選挙に向けた態勢はすべて、支援者とボランティアによって整えられている。
メディアが取り上げるネット選挙をめぐる報道は、コンサルタントが「松竹梅」の三コースによって、最大では数百万円もの対価によって、ネットの指導をする、という。
候補者になりすましたネット上のアカウントを監視したり、ネガティブなキャンペーンに対抗したりするサービスもある。選挙期間中の候補者のホームページの更新作業の代行も。
選挙活動にかかわった過去の経験から、選挙コンサルタントをはじめ、選挙をビジネスとしてとらえて参加する一連の人々の存在がある。
ネット選挙の解禁は、IT関連のコンサルタントやネットのマーケティングの専門家など、新規参入組が群がっている。
こうした自称専門家たちに法外な対価を支払わずとも、ネット選挙は戦える。インターネットの世界は進化していて、個人が情報を発信するアプリケーションすなわち手段のほとんどがフリー(無料)なのである。
「なりすまし」の問題を取り上げる向きが多いが、そもそも偽の候補と見分けがつかないようなフェイスブックやツイッターであれば、選挙には役立たない。有名人をかたったなりすましはいまでもあるが、ネットユーザーは見分けができるものだ。
ネット選挙に新規参入している専門家たちのなかで、候補者のホームページが本物である「認証」機能をうたっている例が多くみうけられる。この問題を考えるうえで、比較の対象となるのは、ネット上の本人認証のなかで、最高度の機密性を要求する、ネット売買や送金である。その仕組みについて詳細を述べる紙幅はないが、ネット選挙で売り込みが図られている「認証」はこれとは比較にならない程度のものである。
ネット選挙ビジネスについて、大胆な表現を許していただけるなら、ネットに詳しくない候補者の陣営の不安にしのび寄る幻影である。しかも彼らの多くは、一票一票を地道に積み上げる、選挙活動を知らない。
ネット選挙という広報活動の主体となるべきは、候補者とその陣営である。
(この項続く)
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