「首相動静」
「自民『女性の悩み聞きます』ネットワーク機関創設へ」
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ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)のツイッターである。
それでは誰がいったい「つぶやいている」のであろうか。
なんと民主党の「公式アカウント」つまりツイッターによる広報戦略の窓である。自民党ではない。
美術家にして作家の赤瀬原平氏がかつて、三省堂の「新明解国語辞典」の改定新版について言葉の意義を読み解いて、「新解さんの謎」(文春文庫)のベストセラーを書き記した。犯罪の容疑者を割り出すプロファイリングのように「新解」の編集意図を読み解いていく。「女性に厳しく、カネを持っていない」と。
「政党ツイッターの謎」がそれぞれの党のアカウントにあふれている。ライバルの党の動静について、ニュースなどを「リツイート」つまり転送している。所属議員などのブログなかりではなく、有識者のブログをリツイートしている現象も多くみられる。
日本維新の会は、選挙の際に推薦した首長のツイッターをしばらくしてから、要約の形でつぶやいている。即時性や同時性が特性であるツイッターの使い方としては、やはり謎である。
企業広報の戦略を練った広報パーソンなら読み解くことは容易である。
政党そのものに広報戦略がないかあるいは、ツイッターなどのSNSについてできる人、おそらくは若手に任せきりなのである。
政党に限った現象ではない。政治家のツイッターの謎も多い。その政治家との関係がうかがえない人のツイッターをリツイートしたり、関係のない本の紹介についてリツイートしたりする。
政治家ではなく担当者のアカウントと化している。政治家のつぶやきは、口頭の言葉か書いた文章を代理でつぶやいているのであろう。
インターネットを使った選挙運動を解禁する公職選挙法の改正案は、このコラムを執筆中の四月中旬に衆議院本会議を全会一致で通過した。今夏に予定されている参議院選挙がその解禁後の初の選挙となる。
この改正案に至る過程で、メールによる選挙活動をどの範囲まで認めるか、あるいはなりすましや中傷についてどのような措置をとるのかが論議の中心となった。
バーチャルとリアルの世界の間になにか隔たりや壁があるかのような問題の設定ではないかと思う。
インターネットはすでに二十年近い歳月を経て、ふたつの世界は混然一体となっている。
企業広報の専門家たちには常識である。ホームページやSNSのアカウントを持たないのは、ひとつの世界の半分を失う、つまり企業の存在感は不完全となる。
いったい何を、どのような手段で、どのように伝えていくのか。広報戦略こそが重要である。
政党も政治家も企業広報が至っている地点まで、たどり着いていない。
(この項続く)
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