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コラム

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見巧者(みごうしゃ)

芝居などを見なれていて,見方のじょうずな・こと(さま)。そのような人をもいう。「大辞林」

 歌舞伎や文楽に詳しい友人にかかると、主役ばかりではなく、脇役を演じる役者や人形、その遣い手についての知識が豊富なので、聞いている私自身もその作品の深さに浸ることがある。古典芸能にふれるようになったのはつい最近のことなので、持つべきものは友である。

 フジテレビのドラマに主演することが多かった、天海祐希がテレビ朝日に出演することが話題になっている「緊急取調室」は、脇役陣の好演がテレビドラマの見巧者たちを楽しませる。

  「緊急」は第4話(2月6日)と第5話(2月13日)を観た。

  「緊急」の脇役陣は、いずれも映画・ドラマの主演級とバイプレイヤーで固められている。

 天海が演じる刑事の真壁有希子が所属するのは、通称で「キントリ」と呼ばれる、警視庁捜査一課・緊急事案対応取調班。刑事部長の郷原正直役に草刈正雄、キントリのトップを務める管理官の梶山勝利には田中哲司。NHK大河ドラマの織田信長に仕える荒木村重も演じている。舞台出身の独特なセリフ回しに魅かれる。

 このシリーズで取り上げたTBS日曜劇場「ATARU」では、子だくさんの風変わりな鑑識係を演じて、栗山千明の刑事とのからみは絶妙だった。

 真壁の同僚である、中田善次郎には大杉蓮。北野武監督の映画ではギャングなどを演じて、「北野組」の重鎮である。小石川春夫には小日向文世。日本を代表するバイプレイヤーであろう。

 菱本進役には、でんでん。ベテラン俳優として、映画・ドラマに欠かせない脇役である。NHK朝のテレビ小説「あまちゃん」の漁協の組合長にして、あまカフェのオーナーである長内六郎役が懐かしい。

 主役の天海の真壁刑事は、警察官の夫を事件で亡くして、ふたりの子どもを育てる母親でもある。同僚たちから「おばさん」扱いをされている。

 さっそうとした天海のイメージとは異なる、新しいフィールドで名脇役たちに囲まれて、生き生きとした演技を続けている。

 ドラマは第5話に至って、夫の死に警察の上層部の秘密が絡んでいるのではないか、と真壁が推測するようになる。

 「緊急」は、1話ごとに殺人事件の謎を解きながら、真壁の夫の死をめぐるサスペンスの物語であることがわかってくる。

 主婦に巧みにすりよって、宝石の詐欺売買を手掛けていた男が、ボストンバックのなかに詰められて発見される。

ボストンバックを引きずる犯人を見たという、目撃者に3人の主婦が名乗りをあげる。

家族と暮らす老婦人と、高級マンション暮らしの主婦、そしてふたりの子育てに追われる裕福ではない女性である。

 それぞれは互いに境遇も異なる。真壁の事情聴取によって、犯人の似顔絵が作られる。目撃者の3人はそれぞれ別の場所から、しかも夜の遠目にみているので、犯人の印象は異なるはずなのに、完全に一致する。

 真壁は3人が相談して、ある犯人像を形作っているのではないか、と推理する。

 3人を同時に呼んで、突き詰めると、彼女たちは殺された詐欺師の被害者であることがわかる。しかも、その詐欺師を追って、だましとられたカネを取り戻そうとする途中で、遭遇したのである。

 そして、詐欺師の部屋で殺された彼を発見する。そのとき、殺人犯は部屋の隅から現れて、彼女たちに偽の証言をするように脅迫するのであった。最初の似顔絵の男は、週刊誌の裏表紙に掲載されていた、宣伝の登場人物であった。殺人犯はその人相を警察に告げるようにいう。

 似顔絵を作り直す作業が改めて行われる。そこに現れた犯人の顔は、死体が詰め込まれたボストンバックが捨てられていた現場を保存するために、立ち番をしていた制服の警察官だった。詐欺師の片棒をかついで、被害者たちの隠し撮りをしていたばかりか、詐欺師に捜査情報を漏らしていた。

 真壁は、この事件から捜査情報を夫の警察官が漏らすことはありえないが、何らかの情報漏えい事件にからんで殺されたのはないかと、疑いだすのであった。

 管理官の梶山に、真壁は携帯電話でそのことを告げる。電話を切った梶山が正面を向くと、そこにいるのは、刑事部長の郷原であった。

「真壁が気づき始めたようです」と梶山は告げる。

 上司や同僚から裏切られているかもしれない。見巧者の観客は、刑事物のドラマの二重性に驚かされ、サスペンスの行方にひきずられるようにして次回も観ようと、思うのではないか。

 キントリに対抗する捜査一課の面々にも、渋い脇役たちが登場する。捜査一課長・相馬一成役の篠井英介は、時代劇から現代劇まで巧みにこなすバイプレイヤーである。その部下の監物大二郎役の鈴木浩介。フジテレビの「ショムニ2013」の上司にすり寄る人事部員・下落合耕一役である。リーゼントスタイルのような髪を固めた、エキセントリックだが正義感あふれる刑事を好演している。   (敬称略)

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 テレビ朝日の人気シリーズ「トリック」は2000年夏からの第1シリーズから、今年の年明けの新春スペシャル3で完結した。仲間由紀恵が演じる奇術師の山田奈緒子と、阿部寛の物理学者・上田次郎のコンビが、殺人事件の謎に挑む人気番組もついに幕を下ろした。魅かれあうようにみえた、上田―山田コンビは結ばれぬままに画面を去った。

  新春の大型ドラマでは、TBSの「“新参者”加賀恭一郎『眠りの森』」のなかで、阿部は刑事・加賀を演じている。見合い相手にトリックの仲間が演じる、同性の山田を登場させている。ふたりはバレーの鑑賞にきて、加賀が居眠りをしたために、山田が縁談を断る。

  「トリック」の仲間―阿部コンビを知っている観客には、たまらないパロディーである。演出家と脚本家のちょっとしたいたずらだった。あるいは局を超えたエールともいえるだろう。

  テレ朝は「金曜ナイトドラマ」に「私の嫌いな探偵」の新たに幕を上げた。「トリック」がヒット作に成長した、週末をまたぐ深夜の帯である。人気シリーズに育て上げる登竜門といえる。

  剛力彩芽が演じるミステリーマニアの女子大生・二宮朱美と、彼女が大家のビルに入居した玉木宏の私立探偵・鵜飼杜夫がコンビで、事件の謎を解いていく。第3話(1月31日)を観た。

  ナンセンスなギャグとパロディーが次々と繰り出されて、謎解きとはまったく関係がない方向にドラマは展開して、そして本筋に戻る。またあらぬ方向に。二宮―鵜飼コンビの歯切れのよいセリフと、コマ落としのフィルムをみるようなテンポの速い展開は、観客を驚かすに十分だろう。

 「シュールコメディ」とうたっている、ニュアンスが伝わる。

  殺人事件は、舞台の架空の街・烏賊川(いかがわ)市の烏賊神神社で起きる。宮司の長男の恋人が背中を刺されて死ぬ。神社にはふたつの祠がある。ひとつの祠の裏で、巫女が発見した死体が、何者かによって、もうひとつの祠の裏に知らぬ間に移動していたのが、事件の謎である。さらに死体が神社の本尊の烏賊の像を握り締めて、口を寄せるようにしていることも。

  二宮―鵜飼コンビには、刑事の砂川(渡辺いっけい)と女性刑事の三木(安田美沙子)が絡む。この砂川は捜査をそっちのけにして、妻と電話で会話して帰宅を急ぐようなナンセンスぶりである。

  事件をめぐる謎解きについて話し合う、いかがわ食堂はいかめしが名物。主人は「ばばあ」と呼ばれる男性の老人である。

  鵜飼の探偵事務所では、謎解きに詰まると突然、二宮(剛力)が事務所を訪れる大学生の戸村流平(白石隼也)とダンスを踊り出す。つられるようにして、鵜飼(玉木)も。

 二宮が顔面を覆う白いゴム製のマスクをかぶって登場するシーンもある。市川崑監督の金田一耕助シリーズの「犬神家の一族」のパロディーである。

  ミステリーファンにはおなじみの犯人が入れ替わるトリックにつかわれるマスクである。ちょっと脇道にそれるが、「トリック」の最後のテレビドラマもまた、全編「犬神家の一族」のパロディー仕立てで、入れ替わりのトリックは、独自に創作して、市川作品に挑戦している。

 二宮が通っている烏賊川市立大学で、彼女は女子ミステリー研究会の会長を務める。仲間と繰り広げる事件の謎解きにも、古今東西の探偵たちと事件の知識が口々に勝手きままに展開していく。テレビの推理ドラマの常連である、船越英一郎の等身大のパネルが、部室には飾られている。

  ナンセンスなギャグとパロディーの数々は、バラエティ番組のテンポのよい展開のように、計算されていないようでいて、事件の謎解きに向かって巧妙に絡み合っていく。

  そして、探偵・刑事物の定石通りに、いったんは解決したかにみえる事件は、最初の謎解きが誤りで、最終的な犯人に至るまでにどんでん返しがある。しかしながら、二宮―鵜飼コンビのそれは、あまりにもナンセンスで、演技のせりふ回しがひとつ狂えば、物語が台無しになってしまうような意外なものであった。

  舞台の烏賊川市のゆるキャラであるイカのぬいぐるみの中の男性が犯人で、殺された宮司の長男の恋人をその中に引きずり込んで殺した、というのが、鵜飼の謎解きであった。ところが、きぐるみの中から出てきたのは女性だった。

  ドラマは二転三転して、鵜飼は犯人を突き止める。犯人は宮司が再婚した妻の娘だった。犯行は長男に対する恋心から、その恋人を殺したことがみえてくる。

  娘の告白を断ち切るように、鵜飼はいう。

 「2時間サスペンスドラマではないので、告白はなし。みなさんで聞いてください」と。

  謎解きは唐突に終了して、鵜飼の事務所のシーンに。殺人を予告された男性が、相談に訪れる。そして、「つづく」の文字が。

  剛力―玉木コンビは、これまでにない探偵者の主人公に躍り出たのではないか。仲間―阿部のコンビがそうであったように、新しいコンビにとって、新鮮な役回りであるからだ。そして、脚本と演出が観る者が不思議な感覚に包まれる。  (敬称略)

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 日本の名作映画、ドラマの数々に出演してきた、藤村志保の静かなナレーションでドラマは幕を開ける。野草の花々が咲く田園地帯が一瞬にして戦場に変わり、その花を摘んでいた少女は戦いのなかに巻き込まれて命を散らす。

  NHK大河ドラマ「軍師 官兵衛」は、乱世の世情を描いたのも束の間、豊臣秀吉(竹中直人)が小田原の城下を見下ろすシーンとなる。秀吉が天下統一を成し遂げる「小田原征伐」(1590年)である。北条氏政の居城の小田原城を、一気に攻め落とせる自信をみせる秀吉のもとに、黒田官兵衛(岡田准)がにじり寄る。戦わずとも和睦は可能であると。

 官兵衛がひとりで小田原城の城門の前に立ち、弓と鉄砲の弾がかすめる。「死ぬことはござらぬ」と告げる。和睦に終わることを暗示するように、門は開かれる。

  大河ドラマの戦国物語は、幕末・維新の物語とならんで、幾度も取り上げられて十八番ともいえる。ちなみに、十八番とは、歌舞伎の市川海老蔵が昨年亡くなった、父団十郎から継いだ市川宗家が代々受け継ぐ18の作品をいう。

  「軍師 官兵衛」のなかで秀吉を演じる竹中直人は、「秀吉」(1996年)でも同じ役を演じている。この時の官兵衛役は伊武雅刀である。「花の生涯」(1963年)に始まった、大河ドラマは今回が53作目となる。

 「戦後の日本は芝居を失った」と語ったのは、コラムニストの山本夏彦だった。芝居小屋が立ち並んだ浅草の光景は遠い過去である。旅回りの一座が列島の各地で興行をしていたことを知る人も少ない。

 亡き山本翁に敬意を払いながら、江戸から続く芝居の命脈を保ってきたのが、大河ドラマではないかと思う。

  「軍師 官兵衛」はその第1回「生き残りの掟」のなかで、黒田家を興した祖父の重隆(竜雷太)と父職隆(柴田恭平)、母いわ(戸田菜穂)の物語をつづっていく。諸国を放浪していた重隆が家の基礎となる財を築いたのは、薬草の目薬であった。全国の守り札を売って歩く神社の信徒に眼をつけて、札とともにその薬も売らせたのである。その売上を資金として近隣に金貸しを始める。そのことが播磨国の豪族である小寺家とつながるきっかけとなって、家老までになる。いまは職隆に当主を譲って隠居の身である。

  「目薬売りであったことをおまえは恥ずかしのか」と、重隆は息子の職隆に問う。商人でも武士でも、いずれにしろ生き抜いていかなければならないと諭すのである。小寺家の重臣からその出自について陰口をたたかれていた。

  職隆が守備する小寺領のなかで、野武士が農民を襲う事件が頻発する。小寺家の重臣たちに、職隆がその陰の頭目ではないかという疑惑が広がる。

 その真実は、すでに櫛橋家と通じていた小寺家の家臣の仕業だった。しかも、その男は職隆の親友であった。

 この策略を見抜いたのは、少年時代の官兵衛である。野武士に襲われた幼なじみの少女を助けて逃げる途中の森のなかで、職隆の親友の配下の者と野武士が相談している現場をみたのである。

 官兵衛はこの情報を巧みに父に伝え、黒田家は面目をほどこす。

  織田信長が武田義元を討った「桶狭間の戦い」(1560年)に際して、もっとも大きな恩賞が、武田軍の位置を知らした部下に与えられたことを知る。「信長というやつ、おもしろい」と官兵衛はいう。

 軍師という情報を重視しながら戦いを進める官兵衛の将来が予言される。

 第1回は、官兵衛の元服のシーンで終わった。

  歌舞伎の十八番はすでに二百年以上にわたって、その時のいまを織り込みながら、観客の歓声を呼んできた。

 海老蔵が十八番のなかから、平家の武将である悪兵衛景清にからまる4作品をひとつにまとめあげたのは、初春花形歌舞伎の「寿三升景清」である。新橋演舞場で3日観た。

 源氏に敗れた景清が、中国の三国時代の関羽の魂と一体化して、源氏を討とうとする強い意思を現わす。しかしながら、ついにはその怨念を昇華して天空に舞う。

  そこには、栄華と衰亡に絡む人生の無常の物語が現れてくる。海老蔵が語っているように、この物語は現代に通じる。

 歌舞伎としては初めて、津軽三味線が使われた。最終幕では舞台に観客の桟敷が設けられるとともに、照明がうす暗くなってまさに江戸の芝居小屋の雰囲気をかもしだした。

  伝統といまの融合こそ、十八番が長らく観客の心をつかむ工夫である。

 「軍師 官兵衛」の滑り出しは、これまでの戦国物語とは異なって、激しい戦闘シーンや英雄譚ではない。

 大河ドラマの十八番である戦国物語に、企業で働く同僚、上司、そして家族のいまを重ね合わせようとしているようにみえる。

  第1回の視聴率は20%を下回った。十八番の新しい試みに観客がちょっと戸惑ったのではないか。海老蔵の舞台の津軽三味線が、賛否を呼んでいるように。

  もうしばらくは、大河ドラマの新趣向の先を観てみようではないか。

 なにより、宮藤官九郎脚本の映画「木更津キャッツアイ」で、爆発力ともいえる演技をみせた岡田准の官兵衛の物語は、始まったばかりである。 (敬称略)

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 最終回が迫るドラマを紹介する。ラストまでもう1回、充分に楽しめる。

 NHK土曜ドラマ「太陽の罠」(最終回・12月21日)と、「真夜中のパン屋さん」(同・12月24日)である。

  にっしーこと西島隆弘が演じるエンジニア・長谷川眞二が主人公の「太陽」は、太陽光発電に関する特許紛争が舞台回しとなっている。タッキーこと滝沢秀明がパン屋の主人・暮林陽介を演じる「真夜中」は、大沼紀子原作の「まよパン」の愛称で親しまれているシリーズがドラマ化された。

  パン屋を始めようとしていた矢先に事故で亡くなった、暮林の妻・美和子役の伊藤歩が、「太陽」の長谷川の妻・葵役で登場する。若手女優として演技派の伊藤歩は、それぞれ人生の謎を秘めた美しいふたりの妻を演じて、観客を引き込む。

  「太陽」の長谷川は、太陽光発電の開発に日夜取り組んでいる。公園で昼食を食べているとき、近くの会社のOLだという葵と知り合い、結婚する。

 長谷川が試作した音響装置は、植木の葉が太陽光電池の小さなパネルになっている。流れ出る音楽はジャズのスランダード・ナンバーである「時の過ぎゆくままに」である。

 この曲が静かにゆったりと流れていきながら、ドラマはサスペンスの緊張度を高めていく。

  長谷川が勤務するメイオウ電機がアメリカの企業から、特許侵害の警告を受ける。「パテント・トロール」と呼ばれる、有望な特許を手に入れて、メーカーに対して侵害の賠償を求める特許マフィアである。

  この特許マフィアとの戦いの正面に立つのが、訴訟対策室長の濱孝一(尾美としのり)である。濱役の尾美はいうまでもなく、連続テレビ小説「あまちゃん」の父親役。特許マフィアに狙われた理由を探っていくうちに、製造マニュアルが社内から漏えいした可能性があることを突きとめる。

  パテント・トロールから警告を受ける前から、特許侵害のおそれを濱は上司の村岡雄三(伊武雅刀)に訴えていた。村岡はその責任を回避しようとして、濱を陥れようとする。ふたりは激論の果てに、濱が村岡の撲殺を図り死体を山中に埋める。しかし、村岡は死なず、病院のベッドに意識不明のまま横たわる。

  新婚生活の甘い香りに包まれていた、エンジニアの長谷川は、太陽光発電の技術にまだ改良の余地のあることを直属の上司を飛び越えて、開発責任者に訴えたことが原因となって、知財部に左遷される。未練が残る開発プロジェクトのサーバーに、他人のパスワードでアクセスする。

 

 殺人未遂事件を起こした濱は、警察の捜査の目をくらますために、長谷川に特許の情報漏えいの疑惑によって、殺人未遂事件の犯人に仕立てようとする。

 刑事の三浦智明(吉田栄作)の捜査によって、長谷川の濡れ衣は晴れる。太陽光電池の製造マニュアルが、米国のサーバーに送信されたのは、長谷川のパソコンからであることを、三浦は告げる。

  知財部に左遷される前に、自宅に仕事を持ち込んでいた長谷川のパソコンを使えるのは、妻の葵である。葵とは何者なのか。

 葵が務めていたという会社の社員名簿にその名前はなかった。結婚式に参列した兄は戸籍上存在しない。

 メイオウ電機に太陽光発電のキーとなる技術を実質的に奪われた、中小企業の経営者の娘が、葵の正体であった。そして、兄というのは、その工場で働いていた幼なじみで、いまではコンサルタントの澤田謙(塚本高史)。

ふたりはパテント・トロールと組んで、メイオウ電機に復讐を誓ったのである。

  「まよパン」は、海外勤務をしていた暮林が単身赴任している間に、妻の美和子が開業準備をしていた。深夜11時から明け方の5時まで営業している。暮林が海外でどんな仕事をしていたのか、そもそも美和子とのなれ初めとは。暮林がそれまでの仕事をなげうって、妻のパン屋を引き継いだ理由は。最終回を前にしても、原作のさまざまな事実が明らかになっていない。

  パン職人の柳弘基(桐山照史)と、美和子の腹違いの妹を名乗ってパン屋の2階に住むようになった、女子高生の篠崎希実(土屋太鳳)がけんかするのを、静かに微笑んでみつめる暮林。パン屋に集まってくる、脇役たちの演技も含めて、原作の人気シリーズが描く群像劇の映像化に成功している。

  テレビドラマの脚本家の斑目裕也(六角精児)は、部屋に望遠鏡を備えてのぞき見がくせの男である。ニューハーフのソフィア(ムロツヨシ)、シングルマザーの水野織絵(前田亜季)とその息子のこだま(藤野大輝)らが、小さな事件を通じて絡み合い、その解決に向けて協力し合う。

  「家族」の物語が今年のドラマの大きな流れではなかったか。血がつながっているかどうかではなく、触れ合い、そしてつながり、暮らすドラマの数々である。「あまちゃん」はいうまでもない。「半沢直樹」もまた、サラリーマンのさまざまな家族模様が描いた。

  このコラムのシリーズの本年ラストに、「家族」を描くふたつのドラマをお薦めします。それでは、また来年おめにかかります。                (敬称略)

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 テレビ朝日の「相棒」シリーズは、シーズン12となって、2000年のプレシーズンと合わせると200本以上のドラマを積み重ねてきた。このコラムのシリーズで「右京はキャラハンかコロンボか」と題して、名作推理ドラマに対するオマージュ(敬意)という視点からその魅力の源泉を探ってみた。過去のシリーズの再放送にはまってしまったからだ。

  「相棒」シリーズの主要な作品のほとんどを観たのではないか、と胸を張れるようになったのはつい最近のことである。

  シーズン12の第8話(12月4日放映予定)「最後の淑女」のゲストスターは、岩下志麻である。「相棒」の出演は初めてではないだろうか。このドラマシリーズに関しては多数の解説本が過去に出ているばかりではなく、ノベライズつまり小説化もなされている。「相棒学」ともいえる愛好家に対して、謙虚に敬意を払わなければならない。

  杉下右京(水谷豊)は過去にどれほど、日本を代表する女優たちが演じる犯人と対決してきたことだろう。フランス文学者の教授だった岸恵子が、別荘の密室事件を企てる。杉下は学生時代に彼女の授業を受講している。フランス語で詩の一節を暗唱し合いながら、ふたりの間に静かな知的なゲームが展開する。

 長山藍子が演じたのは、過激派の爆弾づくりを手伝った、恋人が誤爆で死んだ復讐のために、爆弾づくりを依頼した男性を殺そうとする翻訳家である。

  シリーズ12の初回特別編「ビリーバー」で、警視庁捜査一課の刑事トリオのなかから、三浦信輔刑事(大谷亮介)が警視庁を辞職した。事件にからんで足を刺されて不自由となり、捜査活動が難しくなったからだ。「警備会社にでも再就職する」と三浦は、病院に見舞いにきた右京に寂しそうに告げるのだった。

 同僚の伊丹憲一(川原和久)と芹沢慶二(山中崇史)のトリオの中では、ベテランのいぶし銀のような存在である。

 別の事件では、外資系企業の聞き込みに3人で行って、英語ができることがわかり、伊丹と芹沢を驚かせるシーンもあった。

 「よっ、暇か?」と声をかけて、右京の特命係の部屋に入ってきては、勝手にコーヒーを注ぐ、組織犯罪対策第5課長の角田六郎(山西惇)の人生なら、初期のシリーズで知っている。最近のシリーズでもときどき妻の悪口が出るが、恐妻家である。

 鑑識係として右京を助ける、米沢守(六角精児)は、妻が失踪したままだ。映画化された「絶対絶命! 42.195km 東京ビッグシティーマラソン」(2008年)では、妻にそっくりな女性の殺人事件が発生する。

  登場人物がたちの過去が、さりげなく最新シリーズに織り込まれていることは、「相棒」ファンにとっては、この作品の奥深さを味合う瞬間でもある。

  前回の第7話「目撃証言」(11月27日放映)は、殺人事件のきっかけが過去に起こった老女の自転車による死亡事故の際に、偽証があったことがわかる。それによって、無実の罪に服した男が復讐を遂げて、その証言者を殺す。ドラマは、二重ラセンのように、もうひとつのテーマが隠されていて、ラストシーンで明らかになる。その偽証を誘導したのは、捜査に当たっていた刑事だったのである。

 悲劇に向かうドラマは、毎回のようにその独創性をましているようにみえる。

  右京がいきつけの小料理屋「花の里」のシーン。どうして偽証にいたったのか、疑問を語る右京に対して、女将の月本幸子(鈴木杏樹)は「わかるような気がしますね」とつぶやく。

 月本は殺人未遂事件を起こして服役、そして、別の女囚の脱獄に巻き込まれる事件にも遭遇している。月本をめぐるいくつかの作品は、女優の鈴木杏樹の代表作のひとつといってよいだろう。出所後、右京の離婚した妻の宮部たまき(益子育江)が経営していた店を継いだ。旅にでた宮部たまきが、店を閉めた後、再開まで右京が仕事を終えていき場所を失くして、推理のさえを失くすエピソードもあった。

  5分間でわかる「相棒学」――などと意気込んではみたものの、「相棒」ワールドの全体像はあまりにも大きい。「だめですねぇ、君は……」と右京が、歴代の相棒をたしなめる声が、わたしにも聞こえるようだ。

 「最後にもうひとつ」と、右京の決め台詞のマネを振ってから、水谷豊のあくなき挑戦について述べてみたい。

  刑事役としての水谷の原点は、名匠市川崑監督の「幸福」(1981年)ではないだろうか。小学生の娘と息子を置いたまま、妻は実家に帰ってしまい、水谷演じる刑事は、捜査と子育てに取り組む。

 ミステリーなら、浅見光彦シリーズ(1998~1990年、NTV=現在の日本テレビ)だろう。製作は近代映画協会。映画監督の新藤兼人や吉村公三郎らが設立した独立系プロダクションである。水谷演じるフリーライターの母親役は、新藤を支えた名女優の乙羽信子である。

  映画とテレビを行き来しながら、俳優として成長を続ける水谷豊の人生もまた、「相棒学」の大きなテーマである。

  次回のゲストスターである岩下志麻は、水谷が映画デビューを果たした作品「その人は女教師」(1970年)の主役である。                     (敬称略)

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